移民対策への抗議活動めぐり州兵動員 混乱の色を増すカリフォルニア、トランプ大統領がMAGA主義者寄りの政策に舵を切る理由

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トランプ氏が製造業の雇用を取り戻したい理由

 住宅市場にも暗雲が立ちこめている。4月の米中古住宅販売戸数は年率換算で、前月比0.5%減の400万戸となった。4月としては、リーマンショック直後の2009年以来の低水準だ。

 雇用の伸びにも鈍化の兆しが出ている。5月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は13万9000人増となり、前月から減速した。関税政策の不確実性が背景にある。

 米政策シンクタンク「税財団」は、トランプ関税によりフルタイムの雇用が長期的に68万5000人減ると予測した。

 対してトランプ氏は、関税の引き上げにより伝統的な製造業の雇用を取り戻そうと躍起になっている。昨年の大統領選挙で同氏を支持したのは、肉体労働や伝統的な男性像を再評価する同氏のメッセージに感銘を受けた30歳以下の非大卒の白人男性や、アフリカ系・ヒスパニック系の男性だったからだ。

 高騰する大学の学費とホワイトカラーのキャリアの不確実性からブルーカラーの仕事を選ぶZ世代が増えているとの指摘もある(5月30日付BUSINESS INSIDER)。

マスク氏が去り、残ったのはMAGA主義者

 トランプ氏は5月下旬、ハーバード大学への30億ドル(約4300億円)の補助金を全米各地の職業訓練学校に振り向けることを検討していると述べたが、大統領にこのような法的権限はなく、泥縄の感は否めない。

 このように、トランプ氏の関税政策は国民にまったくアピールできていない。このままの状況が続けば、来年秋の中間選挙で与党共和党が惨敗するのは必至だ。

 頼りにしていた実業家イーロン・マスク氏とも決別した今、トランプ氏があてにできるのはMAGA主義者しかいないのではないかと筆者は考えている。

 このことを如実に示しているのがハーバード大学叩きだろう。

 トランプ氏はキャンパス内での反ユダヤ主義対策が不十分だと批判しているが、本当の狙いはMAGA主義者へのアピールだ。グローバル・エリートの牙城とも言えるハーバード大学を痛めつけ、留学生を排除すれば、MAGA主義者からの支持を一気に高められるからだ。

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