継母に似た女性と結婚し、継母に抱いた想いで不倫する… 恋愛迷路から抜け出せない42歳夫が知った“まさかの真実”
自分に負けた瞬間
ときどきそうやって食事に行く関係が続いて1年近くたったある日、珍しく酔った由美さんが送っていった良輔さんにしなだれかかってきた。
「僕にはその気はない。きみを傷つけるだけだからとやんわり突き放したんですよ。すると由美が『いいの。傷つけて。あなたのことが好き』としがみついてきた。捨て身の女性って怖い。そこまでされると僕自身も反応してしまう。いつの間にか由美のことが好きになっていたんです。家ではそういうことは一切できなかったし。好きなところに欲求が重なって、自分を制御できなかった」
自分に負けた瞬間だったと彼は言った。それを機会に、由美さんをますます好きになった。独占欲が強まり、嫉妬がわくから店には行かなくなった。店での彼女はまったく女っぽさを見せなかったが、それでも酔客と話す彼女を想像するだけで胸が痛んだ。
「半年ほどたって、恋愛感情が爆発し続けていたころ、僕の今抱えている気持ちは継母に対するものと同じだと、四半世紀も前の感情を思い出したんです。嫌な予感がした。由美は継母に似ていました」
実は…
気づいたその日、彼は他の店で時間をつぶしてから、由美さんと軽い食事をとり、いつものように送って行った。
「僕、途中でダメになっちゃったんですよ。それで由美に『ごめん、気になることがあって』と言ったんです。由美は『叔母さんのこと?』とあっさり言いました。由美のおかあさんは、僕の継母の妹だったんです」
大学入学のときに別れ、就職時に一緒に食事をした継母とは年に1度くらいしか会っていなかった。継母が再婚したと聞いてからは一度も会わないままだった。
「僕は継母に妹がいることも知りませんでした。10年くらい一緒に住んでいたのに、継母の親戚などはまったく会ったこともなかった。だけど由美は継母に似ていました。無条件に彼女に惹かれたのは、継母の姪だったからなのかもしれない。由美は大人になってから叔母さんの人生のある時期について聞いたそうです。叔母さんを振り捨てて出ていった義理の息子を許せないと思った。僕の勤務先もわかっているから、調べるのはそれほどむずかしくなかったそうです。どんなひどい奴か間近でたしかめてやろうと思い、それで知り合いが経営しているバーに潜り込んだ、と……」
恨まれていたのかと愕然としたが、由美さんはあわてて言った。「叔母はあなたを恨んでいない。子どもを産まなかった叔母にとって、あなたは唯一の息子だってよく言ってる。ときどき懐かしそうにどうしてるかなと言うこともある。私が勝手に、ひどい息子だと怒っていただけ」と。再婚して幸せだと思っていたが、実際には継母は3年後には再婚相手に死なれたと、彼は由美さんから聞いた。
「再婚したときは連絡をくれたのに、死なれたときはまったく何も言ってこない。心配させたらいけないと思ったんでしょう。やはり継母はそういう女性なんです。そして目の前の由美は、まさに継母の血筋の女性でした」
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