継母に似た女性と結婚し、継母に抱いた想いで不倫する… 恋愛迷路から抜け出せない42歳夫が知った“まさかの真実”
実は真梨恵の育った家庭も
だが結婚後、断片的に真梨恵さんの言葉をつなぎ合わせると、育った家庭はかなりひどかった。父親は外に愛人がいて、週に1回くらいしか帰ってこない。母はそのことで心を病み、真梨恵さんは小学校高学年のころから母のケアをしていた。ヤングケアラーだったわけだ。大学生のときに母は心を病んだまま亡くなった。父は葬式にも来なかったという。それを苦にした真梨恵さんの弟も、一時期、心を病んで入院していた。
「彼女自身、必死で勉強していい大学に入り、父親よりいい会社に就職することでしか憂さ晴らしができなかったそうです。実際、そうなったけど気持ちは晴れなかったって。それだけ聞くのに2年以上かかりました。なかなか一緒にいる時間を作ってくれないんですよ。それでもその話をしてからは少し心を開いてくれた」
結局は似たもの同士だったのかもしれない。親近感が強すぎて、それを運命だと感じてしまった可能性はある。それでも、少しずつ過去を互いに癒やしながら一緒に歩いていきたいという彼の思いは変わらなかった。真梨恵さんもそれには共感してくれた。これからやっと本当の夫婦になっていけると思ったが、妻との心の距離は縮まったようで縮まらず、そのうち完全な友だち関係、ただの同居人へと変わっていった。
そして「大事な人」が…
そして40歳のとき、由美さんという若い女性と知り合った。
「僕がときどき行くバーで、新人バーテンダーと紹介されました。愛想がいいタイプではなかったけど、キリッとした目と一生懸命な姿が印象的だった。彼女を応援したい気持ちが手伝って、それまでより通う頻度が高くなりました」
1年ほど通う中で、バーテンダーになったきっかけを聞いたことがある。だが彼女は笑うだけで答えようとしなかった。若く見えても、人生にはいろいろなことがあったのかもしれない。
「ある日、遅めの時間に行って、彼女の得意のカクテルを1杯だけ飲んだんです。翌朝も早かったけど、どうしても彼女のカクテルで景気づけをしたくて。大事な会議で僕が社内プレゼンをすることになっていた」
1杯飲んでいるうちに顔見知りの客に声をかけられ、少しだけ話し込んだ。そしてあわてて帰ろうと店を出たところで、裏からでてきた由美さんとばったり顔を合わせた。
「ありがとうございました。私も今日はこれで上がりなんですと彼女が言ったんです。店の中よりずっと笑顔が自然だった。いい笑顔だねと言ったら、照れていました。まだまだ店では緊張してますって。なんだか彼女を元気づけたくなって、『お腹すいてない? 何か軽く食べに行こうか』と言ったらうれしそうに頷きました。こんなに簡単に客についていくのか、大丈夫かなと一瞬、思いましたね」
お鮨が食べたいというので、近くの鮨屋につれていった。気持ちいいくらいどんどん食べ進める彼女に、良輔さんは好感を抱いた。
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