終活をしてはダメ、家族だけで過ごさない… 認知症にならない人の「九つの習慣」

ドクター新潮 ライフ

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1週間で6本まで

 社会的なつながりの流れで、お酒に関する話をしたいと思います。近年、「アルコールの害」が強調される傾向にありますが、認知症発症の点から見ると、そうとは言い切れないようです。全く飲まない人の認知症リスクを1とすると、週1~6回の飲酒機会がある人のリスクは0.74と下がるからです。しかし、週7~13回(1日のうちに昼と晩、複数回飲んだりするケースなど)になると、1.96に跳ね上がります。

 厚生労働省の「e-ヘルスネット」というサイトにも、350ミリリットルの缶ビールを基準にした高齢男性の認知症の危険性が紹介されています。それを見ると、やはり全く飲まない人の危険度を1とした場合、1週間で6本までの人の危険度は下がり、逆に7~13本の人は1.5近くに上がり、14本以上の人だと2.5に迫ります。これらのことから、暴飲せずに「お酒を嗜む」(7)のは、認知症予防に効果があることが分かります。

認知症患者を“排除”しない

 この結果には、お酒を通じたコミュニケーションが影響していると考えられます。現在、通称「オレンジカフェ」と呼ばれる認知症カフェが全国7000カ所以上に設置されています。認知症患者に限らず、その家族や医療・介護関係者がカフェに集い、悩みを相談したり、情報交換を行ったりするための空間ですが、私は2019年に横浜市内で「あざみ野オレンジバル」を始め、その場ではお酒も飲めるようにしています。

 オレンジバルの特徴は、多くのオレンジカフェで行われている自己紹介をしないことです。「私は1カ月前に認知症と診断され……」「うちの家族が認知症になったのは……」と自己紹介をすると、どうしても認知症患者は認知症患者だけで、その家族はその家族だけで固まってしまいます。しかし、自己紹介をしなければ誰が誰か分からず、患者も家族も医療関係者も関係なく会話を楽しむことが可能です。

 おかげさまで、自己紹介せずにお酒が飲めるオレンジバルは好評をいただき、昨年12月、NHKなどが主催する「認知症とともに生きるまち大賞」を受賞しました。改めて、認知症患者であっても“排除”しないことの意味を実感しているところです。

 さらに、私は高齢者が何をしなければ認知機能の低下に影響が出るかを調査し、23年にその結果を論文として発表しています。「運転習慣なし」「パソコン使用なし」「インターネット使用なし」を抑え、認知機能を最も低下させることが明らかになったのは、なんと「自分でお金の管理をしない」でした。もちろん、振り込め詐欺対策などには留意しなければなりませんが、高齢者がまだ自分でお金を十分管理できる状態なのに、「大変だろうから」「何か問題が起きたら困るから」と、家族が高齢者からその作業を奪ってしまうと、高齢者の衰えを早めてしまう恐れがあるのです。

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