終活をしてはダメ、家族だけで過ごさない… 認知症にならない人の「九つの習慣」
終活をしない方がよい理由
似た理由から、冒頭で申し上げた「終活をしない」(4)ことも大切になってきます。不要な物を捨てるなどの終活は必要な面もあるでしょうが、「周りに迷惑をかけるといけないから、そろそろ社会的にも身ぎれいに……」といった意味での身辺整理は控えるべきでしょう。
趣味でフラダンス教室に通っていたけれど、体も動かなくなってきたので、同じ教室の人に面倒をかけてしまうかもしれない。そう考えて趣味をやめ、“人生仕舞い”を始めてしまうことは、「お上手!」と人から褒められる機会を自ら手放してしまうことを意味するからです。褒めてくれたり、感謝してくれたりするのは、なにも家族だけとは限りませんからね。
こんな面白い調査結果があります。東京都の板橋区に住む65歳以上の高齢者約400人を2年間追跡し、認知症発症が一つの大きなきっかけである要介護に認定されるリスクの差を、以下の四つのグループに分けて調べたのです。
A 非独居(家族などと共に暮らす)で、SN(ソーシャルネットワーク=社会的つながり≒ご近所付き合い)が良好
B 非独居でSN不良
C 独居でSN良好
D 独居でSN不良
どのグループが一番要介護認定リスクが高かったと思いますか?「D」と答える人が多いのではないでしょうか。ところが正解は「B」、つまり、ともにSN不良ながら、独居ではなく、家族などと共に暮らしている人の方が実は要介護認定のリスクが高かったのです。これには、家の中だけで社会が完結し、引きこもりがちになってしまうことなどが影響していると思われます。家族によって自己肯定感を与えてもらうのが大切であると同時に、「家族だけで過ごさない」(5)ことも重要であることが分かります。
66歳以降に退職すると認知症リスクが低下
社会との接点を保つ上では、「働き続ける」(6)ことも大きなポイントです。早めに退職すると、接するのは家族だけになってしまいがちです。家族は、1を言ったら10を分かってくれる存在ですが、他人はそういうわけにはいかず、場合によっては10を理解してもらうために20を説明する必要があります。これが脳を活性化してくれるのです。
ある調査では、退職年齢が61~64歳の人の認知症リスクを1とした場合、65歳で退職してもそれは変わらないのに、66歳以降に退職すると66%も低下することが明らかになっています。生涯現役がもてはやされる風潮を、「一体いつまで高齢者を働かせるつもりなのか!」などと否定的に捉えずに、働き続けようとする意欲を持つことが大切なのです。
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