跋扈する「トクリュウ」対策の切り札は専門捜査チーム「T3」 全国警察から精鋭を集める「FBI方式」で凶悪犯罪を殲滅できるか

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国家警察がなぜ必要なのか

 FBIなど米国の司法制度に詳しく、サイバー・ネット犯罪にも精通する国際ジャーナリストの山田敏弘氏はいう。

「米国には市警察、州警察、保安官、郡警察など、管轄や任務に応じた制度がありますが、FBIは“連邦捜査官”。つまり、米国全土どこでも捜査・逮捕できる権限があります。採用は独自で、語学や理工学などの専門家や、各警察や軍などで優秀な成績をおさめた人物が採用されます。主にテロや薬物、ギャングやマフィアなどの組織犯罪を扱うこともあり、ホワイトハウスとの距離も近い。スペシャル・エージェント(特別捜査官)でもあり、ガバメント・マン(Gメン)でもあるのです」

 FBIに強力な権限が与えられているのは連邦警察=国家警察、それも捜査と逮捕権を持つ機関であるからだが、このような国家警察の機能を持つことは、警察庁の悲願だったという。

「トクリュウ事件は国内における被害捜査だけでなく、指示役や主犯格はミャンマーやタイ、中国など外国にいる事例が判明しています。捜査の展開によってはインターポールを通じて捜査照会をかけることもあるでしょう。その時、警視庁(東京都)とか神奈川県警とか、“地方警察”として照会をかけるより、“日本警察の警察庁(National Police Agency)”として出ていかないと、国際事件捜査の場では相手にしてもらえないことがあるのです」(同)

 サイバー特捜部を作ったのは、そうした“苦い”経験からだという。

「当時、PCのデータを破壊し、その復旧のための代償を求めるランサムウエアによる被害が相次ぎました。日本でも捜査を進めると、主犯格はロシア国内にいて、他の国にもランサムウエアで攻撃をしかけていることがわかった。そこで、被害を受けた複数国による合同捜査を展開するとなると、警視庁でも参加させてもらえない。一地方警察ではなく、日本の国家警察の機関として捜査・対策にあたる組織を作ろうと、サイバー特捜部を警察庁に作ったのです」(同)

 警察庁(トクリュウ情報分析室)と警視庁(トクリュウ対策本部)がタッグを組み、警視庁にFBIのような機能を持たせるという今回の構想を、山田氏はどう見るか。

「私の取材では、いくら優秀な捜査員を集めても寄せ集め感は否めず、専門外の分野から来ている捜査員もいて、なかなか機能しにくいという話を聞いています。現場だけでなく、指揮官も苦労すると思いますが……」

デイリー新潮編集部

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