跋扈する「トクリュウ」対策の切り札は専門捜査チーム「T3」 全国警察から精鋭を集める「FBI方式」で凶悪犯罪を殲滅できるか
日本版FBI
日本の警察制度では、個々の事件捜査は発生地の都道府県警察が担い、警察庁は必要に応じて県をまたぐ捜査共助などの調整や指導にあたってきた。だが、1995年に全国規模で起きたオウム真理教事件を教訓に、警察法は改正。警察庁長官は、広域組織犯罪等に対処するため、都道府県警に任務分担や態勢について、必要な指示をすることができるようになった。
また22年施行の警察法改正で、戦後初めてとなる捜査権が与えられ、ネット犯罪(サイバー犯罪)を専門に扱うサイバー特捜部を新設した。今回、捜査の中心を警視庁に置き、管轄外の事件であっても捜査できる体制を作り上げたことになるのだが、ちょっと待て。昨年も、トクリュウ対策で大掛かりな組織改編がなかったか?
「昨年4月、特殊詐欺の広域捜査を担当する連合捜査班(TAIT)が発足しました。警視庁(東京)と埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡の6府県警に計約500人の専従捜査員を置き、全国で被害認知を受けた事件捜査を担当します。この1年で440人を逮捕していますが、同じ時期に全国警察が逮捕したトクリュウ事件の容疑者は1万105人で、主犯格や指示役は1割ほどの1011人でした。しかし、TAITによる主犯格の逮捕は3%ほど。どうもうまく機能していないのでは、という声は以前からありました」(同)
警視庁のTAITには、今回の構想と同じく、全国から警察官が派遣されている。新設の特別捜査課には刑事部と組対部で特殊詐欺を担当した250人と、TAITの捜査員200人の計450名でスタートするというが、
「精鋭を集めても、階級が集中したり、捜査経験にばらつきがあったりと、なかなか組織としてうまく機能しないと嘆く幹部がいました。細かい話ですが、同じ階級でも、給与体系も各県警で違います。トクリュウ捜査に関しては、警視庁にFBIのような機能を持たせようとする思惑なのでしょうが、そもそもTAITも、当初は“日本版FBI”なんて言われていました。新体制が発足するからといって、すぐに成果が出るとは思えず、しばらくは様子見が続くでしょう」(前出・警視庁担当記者)
全国の精鋭たちが警視庁に集い、FBI方式でトクリュウ対策にあたる――方針としては素晴らしいのだが、果たして実効性はどうなのだろうか。
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