韓国で始まる「反日」よりも深刻な「報復」の時代 “保守派は監獄送りで根こそぎに”宣言の李在明大統領――鈴置高史氏が読む

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 韓国で左派の報復が始まる。6月4日に就任した李在明(イ・ジェミョン)大統領は投票日直前に「非常戒厳令に関連した保守政治家を全て処罰する」と宣言している。「激しい党争の挙句に滅んだ李朝を見る思いがする」と韓国観察者の鈴置高史氏は息をのむ。

民主主義を謳う専制国家

鈴置:日本では、李在明政権の「反日ぶり」ばかりに注目が集まります。しかし、より見逃せないのが韓国に再び独裁体制が生まれることです。日本の隣に「民主主義を謳う専制国家」が登場するのです。すると韓国のみならず朝鮮半島全体が混乱に陥る可能性が高い。

 李在明氏は5月30日、中央日報系のテレビ局JTBCのYouTube番組「李在明、『内乱には「国民の力」の誰かも同調…責任あれば政治家でも処罰せねば』」(動画付き)で、以下のように語りました。

・[昨年12月3日の戒厳令に関係した人は]処罰されることを明確に見せねばならない。実際に責任ある人は未だに政府の中に数多く隠れている。閣僚たち……重要国家機関にいる。なぜなら、政府が協調を要請し[それを受け、戒厳令に]協調したケースが多い。今こそ、そんな人を皆、捕まえて糾明し責任を問う。

 李在明大統領が代表を務めてきた「共に民主党」はすでに法制司法委員会で「内乱・外患特別検察官法」を通過させ、本会議に送付済みです。同党は国会で3分の2近くの議席を持ちますので、本会議を開けば成立します。

 李在明政権は発足するやいなや、国会で特別検察官を任命し、韓悳洙(ハン・ドクス)前首相ら尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権時代の閣僚の捜査に踏み切ると見られています。もちろん特別検察官には李在明政権の息のかかった人を起用するはずです。

 警察は準備を進めています。非常戒厳特別捜査団は韓悳洙前首相と崔相穆(チェ・サンモク)前経済副首相兼企画財政部長官、李祥敏(イ・サンミン)前行政安全部長官ら戒厳令宣布を図った国務会議に参加した閣僚を呼んで調査したうえ、出国を禁止しています。

「与党議員も内乱に加担」

 特別検察官の捜査対象は戒厳令当時、与党だった保守「国民の力」の有力議員にも及ぶ見込みです。李在明氏はJTBCのYouTube番組で以下のようにも語っています。

・政治家も責任があれば[捜査対象に]せねばならない。私は[尹錫悦政権と「国民の力」が]役割分担したと見る。立法府を掌握するための行動を武力だけでしたのか……私は「国民の力」の誰かがここで同調したと考える。
・戒厳の日の晩に国会・本会議場に行かねばならぬ国会議員がなぜ、外からひっきりなしに「出て来い」と……。私は何か意味があったと思う。

 ここで言う「政治家」とは国会議員を指します。韓国では閣僚のほとんどは議席を持ちません。戒厳令宣布の直後、「国民の力」の議員の多くが本会議場に入らず、国会近くの党本部に集まりました。

 このことから、戒厳令反対の国会決議を「国民の力」が邪魔するつもりだったと李在明氏は見ています。本会議場で「共に民主党」などの議員と一緒に決議に賛成した「国民の力」の議員は108人中18人に留まりました。

 当時、「国民の力」の有力議員らが尹錫悦大統領からの電話を受けていたことも、大統領の指示で戒厳令反対決議を潰そうとした証拠と李在明氏は見なします。李在明政権下では、元閣僚に加え「国民の力」の有力議員も直ちに内乱罪の被疑者になるわけです。

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