韓国で始まる「反日」よりも深刻な「報復」の時代 “保守派は監獄送りで根こそぎに”宣言の李在明大統領――鈴置高史氏が読む
李朝の伝統「根絶やし」
――左派は保守を「根絶やし」にするつもりですね。
鈴置:李朝以来の韓国の伝統です。力を握った側が反対派を皆殺しにするのがこの国のやり方です。「国民の力」は5月30日、「政治報復だ」との報道官声明を発表しましたが、蟷螂の斧です。国会で少数党であるうえ、大統領も左派に取られたのですから為す術がありません。
こんな無茶をすれば、保守の側が「窮鼠猫を噛む」行動に出かねません。テロ事件もあり得ます。李在明氏本人がそれを警戒し、選挙運動中も過去にない厳しい警備を警察に求めました。
軍のクーデターだって起きかねません。ほとんどの韓国人が「戒厳令など大昔の話」と考えていたら、本当に起きてしまったのですから。新政権が発足しても内戦含みの状況が続きます。
――裁判所は李在明政権の言うことを聞きますか?
鈴置:それもちゃんと「手当て」してあります。「共に民主党」は最高裁の裁判官を14人から30人へと増やす法案を準備中です。増員分の裁判官のほとんどは左派が占めることになるのでしょう。
尹錫悦前大統領が任命した曹喜大(チョ・ヒデ)最高裁長官も辞めさせるつもりです。「共に民主党」は曹喜大長官に対する国会聴聞会と、特別検事を任命して捜査する法案も発議済みです。
最高裁は5月1日、李在明氏の公職選挙法違反を問う裁判で、事実上の有罪判決を確定しました。李在明氏側は大統領選挙を前に司法が選挙に介入したと強く反発、「司法改革」に乗り出したのです。
李在明氏は公職選挙法違反容疑以外にもいくつかの裁判を抱えており、自分を守るため「司法改革」を打ち出したのですが、当然、保守を根絶やしにする攻撃用としても活用するわけです。
裁判官の査定権も握る
――でも、良心ある裁判官もいるでしょう?
鈴置:李在明氏は裁判官の評価は従来の裁判所長ではなく、自ら実施すると言いだしました。大統領選挙の公約集「今から本当の大韓民国」の「内乱克服と民主主義の回復・司法改革を完遂します」(39ページ)の項で「裁判官に対する勤務評定、中間評価を管理するための裁判官評価委員会を設置する」と謳ったのです。
新設の委員会の詳細は明らかにしていませんが事実上、大統領か国会が支配する――いずれにしても左派が握ることになります。
良心ある裁判官がいても、左派から睨まれればどんどん左遷されることになります。すでに、前回の左派、文在寅(ムン・ジェイン)政権の時に保守・中道の裁判官は出世をあきらめ辞職しています。
「共に民主党」は「誤った判決」を下した裁判官に対しては懲役10年を科せる「法歪曲罪」も発議しています。裁判官・検事・警察官らが当事者の一方を有利または不利にする目的で法を歪曲して適用した場合、10年以下の懲役と10年以下の資格停止に処するという、普通の国では聞いたこともない法律です。
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