採用面接で「仲良くなくても仕事はできる」と言い放つ…就職率98%で量産される“史上最強世代”をどう扱う?
5月23日に文部科学省と厚生労働省が発表した、2025年3月大卒者の就職率は、98.0%と、前年の98.1%に続き過去最高水準をキープしている。“超売り手市場”を背景に、採用現場や新人研修の現場では“史上最強”とも言われる強気な新人が増えているのだそう。キャリアコンサルタントでハナマルキャリア総合研究所代表である上田晶美氏が、実際にミドル世代から受けたあっと驚く相談事例とは――。
(前後編の前編)
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※この記事は『若者が去っていく職場』(上田晶美著、草思社)の内容をもとに、一部を抜粋/編集してお伝えしています。
入社試験で「オールテレワークで働きたい」と言われ
「コロナ禍を経て、若い人のことが本当にわからなくなりました」
と言うのは、製薬メーカー宣伝職のJさん。二人の子育てをしながら働く40代で、コロナ禍からのテレワークにとても助けられたというワーキングマザーです。
「子どもはとにかく病気をします。いつも急なので予定が全く立たないし、有給休暇も足りません。そんなときに少し具合が良くなったら、家で子どもを見ながら仕事ができるテレワークはとても助かりました。子育て中の人にとって、テレワークほどありがたいものはありません」
コロナ禍の最中はほぼ毎日テレワーク。しかし、2年目3年目と次第に出社が増えてきて、現在テレワークは週に1日くらいに減ってきたそうです。出社組が増える中で、Jさんは週に1 日のテレワークを死守していきたいと思っています。
「子どもが病気のときだけでなく、普段から通勤時間がないというのは何といっても体が楽です。それでなくても、毎日保育園の送り迎えがあるんですから。それだけでヘトヘトです。保育園には自転車ですが、乗りたがらないときはいっしょに気の済むまで歩きます。いつもギリギリです。でもテレワークの日は昼休みに買い物に行ったり、早めに料理などの家事もできて助かります」
テレワークに救われたJさんですが、そのテレワークの影響なのか、若手に接するとかなり温度差を感じると言います。
「時々、採用面接にも現場のマネジャーとして顔を出すんですが、そのときのやり取りにモヤッとしました。志望してくる若い人にオールテレワークで働きたいと言われたんです。第二新卒くらいの20 代でしたが、それで会社になじめるのかな? 仕事を覚えられるのかな? と違和感を覚えました。それでつい、『はじめからテレワークで会社になじめますか?』と聞いたら、『仲良くならなくても仕事はできますので』と切り返されたんですよ」
そんな私も「仕事の人間関係には頓着している余裕はない」
仲良くという定義がそれぞれ違うのでしょうが、仕事を切り分けて、自分の担当をロボットのようにこなしていくつもりなのかなと思うとモヤッとしたそうです。レーンに並んだロボットではないのですから、切り分けられた仕事としても、はじめは会社全体の仕事の流れについて把握する必要があるし、その中の位置づけについて理解していくには、コミュニケーションが必須です。
指示されたことだけをやればいいという気持ちが出ている発言かもしれません。一人で完結できる仕事があったとしても、それをいきなり新人には任せないでしょう。
先ほどの「仲良くならなくても」発言について、Jさんはいろいろな人に意見を聞いてみたそうです。すると、「私もそちら側かも?」と思い当たったそうです。
「仲良くなる、これはすなわち仕事に感情が多く入ってくるということですよね。仕事に感情をあまりにも多く持ち込むのは、疲れてしまう一因なのかなと思っています。知り合いの中には、それは入れ込みすぎじゃない? もっと割り切ったら? と思える人もいますからね。私は家族のケアを夫といかに分業するか、保育園の送り迎えや休日の過ごし方など、いつも戦いなので、仕事の人間関係には頓着している余裕はあまりないのが正直なところです。割り切ってどんどん仕事を進めたいんですよね。だから私も気をつけないと!と逆に思えました」
働き方の多様化で「正社員だからこうすべき」というような考え方も見直さなくてはならないのかもしれません。「みんなで仲良く一致団結して頑張ろう!」的な考え方は、もはや旧世代的なのでしょうか。確かに社員旅行や会社の運動会などはなくなってきました。必要以上に関わりたくない、若い人たちのそんな本音が見えるトピックでした。
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