86歳にして現役! 漫画界のレジェンド「ちばてつや」が明かす“色っぽいストーリー”を描けなかった理由は「母親から説教をくらいましてね(笑)」

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手には表情がある

 多くのちば作品を読んで育った記者が、かねてより抱いていた感想を聞いてみた。それは、ちば作品は「手の描き方が美しい」ということ。キャラクターに応じて可愛かったり、力強かったり、しなやかだったり……。

「手を褒められたのは初めてですよ(笑)。でもね、私も長く描いていて思うのは、手にはとても繊細な“表情”があるんですよ。例えば、嬉しそうな顔をしていても、手に力が入っているようなら、心の中の本当の気持ちが分かる。手に汗を握る、なんてまさにそう。芝居でもそうですね。笑っていても、手に表情を持たせることでその人の本音を演じる。実は、手の表現というのは大事なんですよ」

 生きている人物だけでなく、死んでしまった人を描くときも手は重要だという。

「死んでいるのだから、力もなく、だらっとしたとした手が描けないと、この人はまだ生きていると思われてしまいます。キャラクターの気持ちや行動を描くのに、表情や仕草と同じくらい、手も重要な表現ですね」

 その「手」をめぐり、あの名作「あしたのジョー」で思わぬ発見があった。

【第2回は「最終回で真っ白に燃えつきた『あしたのジョー』はどうなったのか? 『ちばてつや』を歓喜させた“法医学者”の『まだ生きていますよ』」不朽の名作「あしたのジョー」の秘話をたっぷり】

ちばてつや
1939年、東京生まれ。7歳まで旧満州(中国東北部)で過ごす。56年、漫画家デビュー。代表作に「ハリスの旋風」「1・2・3と4・5・ロク」「あしたのジョー」「おれは鉄兵」「あした天気になあれ」「のたり松太郎」、著書に『ちばてつやが語る「ちばてつや」』(集英社新書)、『ちばてつや自伝 屋根うらの絵本かき』(新日本出版社)など多数。80年からちばてつや賞選考委員。2024年、第72回菊池寛賞、そして漫画家として初めて文化勲章を受章した。

デイリー新潮編集部

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