「不合格を経験しすぎて、受かる自信はなかったです」 柔道世界女王・朝比奈沙羅が明かす3度目の正直で医学部に合格できた理由

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できるか、できないかではなく、やるんです!

 一次試験を突破して安堵したのも束の間、朝比奈選手は他の受験生とのグループワークと個人面接で合否が決まる2次試験の日を迎えた。

 受験生同士で「AIが医療に参入することの是非」を討論・プレゼンテーションをした後、2名の教授陣で構成された4会場を回る個人面接に臨んだが……。そこでは厳しい質問が相次いだ。

「当時の私は、既に『医学部を目指す柔道選手』として名前が知られていたんですよ。そのせいもあって『本当に柔道と医学部生を両立できるんですか?』といった個人的なことも複数の先生方から多く尋ねられたような気がします」

 予備校で面接の予行演習を繰り返し、「4か所を巡る面接試験では、何度も同じようなことを聞かれる可能性があるので、決して嫌な顔はしないように。そして動揺せずに平常心を保つように」と送り出されたものの、気色ばむ場面もあったそう。

「ある先生に『君の頭で、年々難しくなる医師国家試験に、本当に合格できるの?』と言われた時に、『できるか、できないかではなく、やるんです!』と強めの語気で返してしまって。その時は『失礼なことを言ってしまったな……』と後悔しましたが、なんとか合格させていただけて、先生方の心の広さに感謝しています」

生物の勉強が辛すぎた

 コロナ禍の襲来に伴い緊急事態宣言が発令された2020年4月、医師になる夢のスタートラインに立った朝比奈選手は、思わぬ壁に直面した。

「受験の時に物理と化学を選択していたので、ほとんど知識がなかった生物の授業は付いていくのが大変で、初めて見た用語をひたすら覚える日々は本当に辛かったです」

 獨協医大では、入学後には「基礎生物」や「細胞生物学」が必修とされ、単位の取得が求められた。朝比奈選手のように「化学」と「物理」での受験も可能だが、医大志望者は入学後を見越して「化学」と「生物」を取得するケースが大半だ。暗記科目を学んだ経験の少ない朝比奈選手にとって最初のハードルになった。

「当初思い描いていたよりも勉強は大変で、辛くて仕方ない時もありました。年下の同級生が勉強に取り組む姿を見ていると、『自分の暗記力が落ちているな』と感じることもありますが、彼らと一緒に勉強することで成績も伸びましたし、おかげさまで素晴らしい友人たちの刺激を受けながら、毎日過ごせています」

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