「もうダメだ…」限界を感じたら試したい、脳の疲れを癒す科学的休息法
長時間、根を詰めて作業をすれば、脳に疲労がたまり、むしろ作業効率も落ちるというもの。脳は一定時間働き続けると消耗し、適切な休息を取らないと集中力も下がるのだ。
そんな時に、リフレッシュするのに有効なのが「ボーッとする行為」。実は、ボーッとすることは私たちが考えている以上に脳にとって重要なアクションなのだ。
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限られた休憩時間を上手に使って、脳の疲れを癒やす休憩の取り方を紹介する。(引用はすべて堀田秀吾氏の『決めることに疲れない 最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣』より)
あえて休憩を取る
そもそも人間の集中力は、そう長く続くものではありません。一度何かをやり始めると、脳は単純なので“やる気”のエンジンがかかります。その一方で、脳は新しい刺激を欲しがるため、同じことばかりをしていると、刺激を受けづらくなる゛馴化“という状況に陥ってしまい、集中力はどうしても落ちてくるのです。
ここで、ニュージーランド・カンタベリー大学のヘルトンとラッセルによる研究を、ご紹介しましょう。この実験では、被験者を次の3つのグループに分け、モニター上に現れる楕円の位置を認識し続けてもらうテストをしました。
グループ(1) テストの合間に約2分の休憩を取る
グループ(2) 数字や文字の位置の認識といった別の課題をテストの間にはさむ
グループ(3) 休憩なしで、楕円の位置認識のテストをずっと続ける
すると、(1)の休憩を取ったグループの成績が最も良く、(3)のずっと同じ作業をし続けたグループが最も悪かったという結果になりました。どんなに脳に新しい刺激を与えたとしても、いつかは必ず疲れてしまいます。ですから、リラックスすることは、決断疲れを引き起こした脳を休める上で、欠かすことのできないアクションです。
どんなに忙しくても、あえて休憩を取る勇気をもつことが大切なのです。
休憩にはストレッチを
適度な休憩をはさんだ方が作業効率は上がるわけですから、集中力が切れてスマホをいじりたい欲求にかられたら、たとえばコーヒーを飲むなどして、とりあえず2分ほど休んでみましょう。それだけでも十分です。
シンガポール国立大学のキムらが80人以上の韓国人を対象に行った調査では、休憩時間の行動が、昼食後の仕事と、終業後にどのような影響があるかを10日間にわたって記録しています。その結果、以下の3点が判明しました。
(1)ボーッとする、ストレッチをするなど「リラックス系」の活動、もしくは、同僚とのおしゃべりなどの「社交系」の活動をする
→仕事の大変さを軽減させることに役立つ
(2)新聞を読む、メールをチェックするなどの「認知活動系」をする
→昼食後の仕事を大変だと感じやすくなり、終業後の疲労感が高まる
(3)お菓子を食べる、飲み物を飲むなど「栄養摂取系」の活動をする
→基本的には無効果(ただし、カフェインの摂取は、仕事が大変だと感じる気持ちを軽減させることに役立つ)
また、韓国・亜洲大学校のリーと韓国行動科学研究院のキムの研究によると、ランチタイムにスマホでインターネットやSNSなどを利用していると、午後に精神的な疲労を感じやすくなるとのこと。休憩するときは、目をつむったり、散歩をしたり、軽くストレッチしたりと、きちんと頭を休めることが大切です。
ボーッとして脳を活性化させる
実は、ボーッとする行為は、私たちが考えている以上に重要なアクションです。
ワシントン大学のレイクルらの研究に、「ボーッとすると脳は平常時の15~20倍のエネルギーを使うため、アイデアもわきやすくなる」というものがあります。
研究によれば、何か行動をしているときと、ボーッとしているときの脳の動きを比較すると、後者のほうが記憶に関する部位や価値判断に関する部位が活発に働いていたことが明らかになったといいます。
トイレに行ったときや、お湯を沸かしてコーヒーをいれているとき。どういうわけか、ふっとアイデアがわき出ることがありませんか?
実は、これらもボーッとすることによる賜物だと、研究ではうたっています。ボーッとするには、砂時計を見つめる、コーヒーやお茶をいれる、床掃除をするなど、自分が無心になれることであれば何をしても大丈夫です。
それにしても、どうしてこうした現象が起きるのでしょうか?
何かをしていると、その行動をするために、脳の必要な部位にエネルギーが集中します。多くのエネルギーを特定の場所で使うため、当然、その他の部位にエネルギーが行かなくなってしまいます。ボーッとすると、脳の一部に向かっていたこのエネルギーが分散されます。そして、脳全体に均一的にエネルギーが行き渡るため、結果的に使われていなかった部位にもエネルギーが届く。すると、集中しているときはつながらないような脳のネットワーク同士が交流し合い、ひらめきやすくなるというわけです。こうした状態を、「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼んでいます。
それこそ、自分にとって軽視できないような決断が目の前にあるときは、一度、ボーッとして脳全体にエネルギーを行き届かせるのもいいのではないでしょうか。よりスマートな選択につながるはずです。
いつもアンテナを高くして生活していては、疲れてしまいます。ときには、ボーッとしていいのです。
卓上にミニ植物を置く
脳を休めるために、自然の力を借りるのも有効な手段です。
2019年に発表されたミシガン大学のハンターらの研究では、都会暮らしをしている36人の被験者に、8週間にわたって、週に最低3回10分以上、自然に触れる機会を作って過ごしてもらいました。場所は、近所の公園だったり、山だったり、被験者それぞれが「自然」と感じる空間です。
調査期間中、4回にわたって各被験者のコルチゾールの分泌量(ストレス度合い)をチェックした結果、1回あたり20~30分間、自然に触れると、もっともストレスを減らす効果があることがわかりました。ストレス値が1時間あたりでなんと21.3%も低下したというのです。30分を越えると引き続き効果はあるものの、その割合は減少することもわかったそうです。
自然との接触がなかった人と比べて、自然に触れた時間が1週間で120分以上ある人は健康状態も良く、幸福感を覚えることが多いとも言われています。休みの日などは、キャンプや自然あふれる地域の散策をするのも効果的でしょう。
自然の力はストレス解消に役立つだけではありません。カンザス大学のアチリーらの研究に「自然のなかに4日間いると問題解決能力が高まる」という調査結果があります。
実験では、参加者たちが峡谷などの自然環境で4日間のキャンプをし、その間、歩き回ったグループとそうではないグループに分け比較したところ、前者のほうが問題を解決する能力が5割も高まり、論理的に積み上げていく思考力や知的能力が向上したといいます。
もちろん、中には「そんな場所に行く余裕がない」という人もいるでしょう。
そんな方は、ご自身の机や食卓の上に自然を感じられるミニ観葉植物やミニ盆栽を置いておくだけでOKです。千葉大学のソンらの研究では、盆栽を見るだけで、疲労の軽減につながることが明らかにされています。
自然に触れることは、「過剰負荷環境」の中で生きている私たちにとっては、有効な対策になるのです。