恋も行為も経験せず結婚したら…50歳間近での“初めて”に狂った夫 最終的に「死」までよぎった17歳年下との恋の果て

  • ブックマーク

遙花さんに促されるまま…

 完全に恋に落ちてしまった太一郎さんは、ネットで女性に好かれる秘訣などを検索して読み込んだそうだ。恋は人を童心に返す。

「それでも、恋なんてしたことのない僕は無自覚でした。ただ遙花に会いたかっただけ。気づいたら月に数回、食事をするようになっていました。2ヶ月くらいたったころかなあ、食事のあと、いつものように彼女を送っていこうとしたら、『太一郎さんにとって、私はずっと妹みたいな存在なの?』と聞かれて。そこで初めてドキッとしたんです。これはまさに恋というものなのではなかろうか、と。愚かですよね」

 好きだ、とつぶやいた。もっと大きな声で言ってもいい。世の中の人に、僕は遙花が好きなんですと伝えたい。思うがままに言葉が出てきた。遙花さんは太一郎さんの腕をとり、ホテル街へと導いた。いや、それはと彼は足がもつれるほど「ビビった」という。

「なんせ、プロ以外の女性と性行為をしたことがないんですよ。遙花とうまくできなかったら嫌われる。だからためらいました。そうしたら遙花が『太一郎さん、淑子さんが怖いの? それとも淑子さんに悪くてできない?』と言い出した。そう言われると、そんなことないよと言うしかない。遙花は男心がわかっていたんでしょうね」

どんどん狂っていく太一郎さん

 恋したことのない太一郎さんを手玉にとるくらいのことはたやすかったのかもしれない。その日を境に、太一郎さんは遙花さんの心と体に溺れていった。毎日会いたい、離れていると苦しくてたまらない。彼は遙花さんにたびたびそんなメッセージを送ったという。

「夜中に声が聞きたくてたまらなくなって電話したこともあります。彼女はひとり暮らしだから、深夜に長電話をして、そのあげく『どうしても会いたい。今から行く』と家を出て彼女のところに向かったことも何度も。昼間、仕事をしていても、ふっと彼女のことを思い出して、急にせつなくなってくる。僕はどうがんばっても、彼女のすべてを知ることはできない。彼女の過去を知りたいと思っても、きちんと知ることなんてできない。彼女と同化したい。彼女の気持ちが直接、僕に伝わってくるような装置はないのか、なんてバカなことを考えたりもした。好きだった。それ以外の言葉が見つからない」

 1週間、毎日会ったこともある。ほんの少しでもいい、顔さえ見られればいいと、夜中に彼女の部屋までタクシーを飛ばし、顔を見てそのまま帰ってきた。自分でも愚かだとわかっているのに止められない。好きだから、という理由で何でもできた。

「ただ、彼女は義母の会社の社員なんですよね。そこをうっかりしていたんですが、2年くらいそういう生活が続いたころ、義母が遙花を呼び出して『最近、恋でもしてるの?』と尋ねたそうです。『既婚者だけはやめておきなさいね』と言われたとか。義母にバレているのかもと戦々恐々としていたけど、肝心の淑子は何も言わない。彼女はこの生活が壊れなければ文句を言うつもりはなかったのかもしれません」

次ページ:妻に切り出すと…

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。