恋も行為も経験せず結婚したら…50歳間近での“初めて”に狂った夫 最終的に「死」までよぎった17歳年下との恋の果て
【前後編の後編/前編を読む】まじめ一筋で女性を知らずに結婚…「おそらく妻も」 お店で特訓して臨んだ49歳夫“試練の夜”の結果は
父の教えを信じ、幼い頃から“まじめ”に生きてきた守田太一郎(49歳・仮名=以下同)さんは、夜遊び知らずの学生時代を送り、恋愛経験がないまま、35歳で見合い結婚した。5歳年下の淑子さんは女子校育ちのお嬢様。母方が会社を営み、新居も彼女の親に買ってもらったという。異性を知らないのは淑子さんも同様で、太一郎は風俗店で“特訓”を受けて初夜に臨んだものの、拒まれてしまう。彼自身も行為に積極的になれず「子どもを持たずに犬と暮らすのも悪くない」と、思い始めたのだが……。
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【前編を読む】まじめ一筋で女性を知らずに結婚…「おそらく妻も」 お店で特訓して臨んだ49歳夫“試練の夜”の結果は
ときおり淑子さんの実家に行くと、「そろそろじゃないの? 子ども」「早く孫を抱きたいわ」と義母に言われることもあった。だが彼は、「すみません、なかなか」と口を濁すだけだった。淑子さんは知らん顔しているのだが、おそらく彼女も生きづらい人生を送ってきたのだろうと察して、いつも適当にごまかした。
「結婚して10年たったとき、淑子は1度だけ、『いつもありがとう。私の実家から守ってくれて』と言ったんです。伝わっていたんだなとうれしくなりました。ただ、僕自身、何の不自由もなく生活させてもらっていることに感謝していましたから、利害関係が一致した結婚だったのかもしれません」
「よくなかった」相手との関係…
恋だの愛だのという関係ではなかったが、人としての情は結ばれていたのだろう。だが、そんなふうに感じたすぐ後、彼は「一世一代の恋」に落ちてしまうのだ。人生、一寸先は闇だ。
「相手がまたよくなかった。義母の会社は一族で経営しているので、淑子は経営陣ではないけれど社内事情は知っているんです。義母と淑子の伝達係みたいな女性がいて、ときどき家にやってきては淑子と話をしている。もしかしたら僕らの夫婦関係について探りを入れるために義母が派遣していたのかもしれませんが。ある日、その伝達係が新しい女性に変わったんです。義母の遠縁に当たる、その遙花ちゃんという子が人懐こい子でして。淑子もまるで妹みたいにかわいがっていた」
ある日、太一郎さんは遙花さんと街中でばったり遭遇した。太一郎さんは取引先との打ち合わせが終わったところ、遙花さんは仕事帰りに友人とお茶をしてきたところだった。
「夜7時くらいでした。『太一郎さん、お腹減ってませんか』と聞かれて、そういえばその日は忙しくてランチもろくにとっていないことを思い出した。軽く何か食べましょうよと言われて、『近くにおいしい台湾料理があるんですよ』と彼女に連れていかれた。そこが本当においしくてね。途中で淑子に『仕事が延びたから遅くなる』とメッセージを送っておきました」
遙花さんは、最近観た映画の話などをしながら、おいしそうにパクパクと料理を体に入れていく。そういう食べ方をする女性を初めて見たような気がすると太一郎さんは言った。
「淑子は料理はうまいけど、彼女自身がおいしそうに食べるなあと思ったことがないんですよ。見た目もきれいだし味もいいんだけど、一緒に食べていて楽しいわけではなかった。ところが遙花は違う。彼女が食べるのを見ていると、僕もどんどん食欲がわいてきて、ふたりでたくさん食べてたくさんしゃべって……。楽しかった」
女性と一緒にいて楽しいというのは、こういうことかと彼は思った。自分とは感性が違う、それなのに楽しい、論理的な会話がなくても気持ちが弾む。いつもの自分とは違う自分を彼は発見した。それは子どものころから心の奥底で眠っていたものが急に目覚めたような感じだった。
「帰り際に、また何かおいしいものを食べに行こうか、連れていってよと冗談交じりに言うと、彼女はパッと顔を輝かせた。僕が女性相手にあんな軽口を叩いたのは初めてだし、女性の表情の変化を見て、自分までうれしくなるのも初めてだった」
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