SNS上に外国人観光客への非難が殺到する“本質的な理由” 観光学部の学生も「海外に行かない」現状?…“被害者視点”に偏った議論を打開できるか

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観光と国益

 日本人も海外旅行を満喫し、その経験を元に来日外国人観光客によるオーバーツーリズムについて考える──これこそが理想的な議論の出発点だと西川准教授は提案した上で、「観光立国という施策を政府が国民に押し付けたという側面は否定できないと思います」と指摘する。

「観光立国の推進は2003年、当時は首相だった小泉純一郎氏が国会の施政方針演説で積極策を打ち出したことが原点です。以来、常に振興策が採られてきました。ただし、そのメリットとして挙げられたのは経済的な利益です。これでは観光で直接、潤わない国民は納得できませんし、オーバーツーリズムの被害を訴えるのは当然でしょう。例えば外国人観光客が日本の素晴らしさを満喫し、日本のファンになって帰国したとすれば、それは外交面の“国益”に資するという観点も成立するはずです。しかし、そうした議論は皆無と言っていいでしょう。日本人は今、初めてオーバーツーリズムに直面しています。日本人にとって観光とは何か、日本という国家にとって観光立国とはどのような意味を持つのかといった根源的な議論を開始するには絶好の機会だと言えるのではないでしょうか」(同・西川准教授)

 コロナ禍が蔓延していた当時、観光は「不要不急」の筆頭格に挙げられていた。だが西川准教授は、確かに観光は「不急」かもしれないが、「不要」ではないと訴える。

 観光が人間の知見にもたらす恵みは非常に豊かだ。観光は「有要不急」という観点から冷静な議論を積み重ねる必要があるという。

 第1回【オーバーツーリズム批判は外国人差別か? 富士山で連続遭難した中国人大学生に批判が殺到…専門家は「地元住民のケアと外国人排斥は無関係」】では、なぜ富士山で2回連続遭難してしまった中国人大学生に批判が集中したのか、オーバーツーリズムと外国人観光客の排斥運動は同質なのか、という問題などについて詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部

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