「四毒」を絶ったら「ダイエットに効果」「花粉症が治った」の声…素人が自分の体験を周囲に勧めることへの違和感

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外食できないのでは

 ここ数年間、「四毒」断ちをしたらダイエットに効果があった、健康になったといったことを述べたり、SNSで主張したりする人をちらほら見かける。四毒とは、小麦粉、砂糖を含めた甘いもの、植物油、乳製品のことである。これらは体にとって害であり、避けることによって健康な身体を手に入れられると彼らは主張する。

 そうなると、米中心の主食にし、おかずには刺身や、たっぷりの野菜を砂糖抜きで煮たり茹でたりしたもの、魚の塩焼きやらステーキなどを食べるべし、という話になってくる。スイーツ類は論外で、麺類・パン・シリアルもダメ、炒め物もいかん! と。

 だったらもはや外食はできないのではないか。マクドナルドの「グラコロ」(グラタンコロッケバーガー)なんて、バンズ(小麦)にマカロニと海老入りクリームコロッケとキャベツを挟んだもの。まさに小麦粉の塊であり、植物油・乳製品も使用されている。さらにチーズ入りも存在し、乳製品をブーストしている。

 四毒を断っている人にとってはまさに“忌むべき商品”だが、こうなると天丼、中華まん、パスタ、ケーキ、クッキー、揚げ物なども同様に恐怖の食べ物になってくるだろう。そこまで色々なものを怖がって果たして人生楽しいのだろうか? と考えることもある。まぁ、所詮他人の思想なのでどうでもいいことではある。

ジョコビッチの影響も

 ただし、厄介なのがこの人達と食事に行く場合である。幹事にでもなったら大変だ。お店を相当気にしなくてはならない。さすがに小麦アレルギーや蕎麦アレルギーを持つ人をお好み焼き屋や蕎麦屋に連れて行くことは避けるが、公言していないまでも「四毒」を避ける人というものは時々いる。この人達に韓国料理屋さんで「あ、チヂミどうぞ、熱い内に」なんて勧めようものなら「私は四毒を回避するため、小麦粉系は食べないんですよ」と言う。そしてたいてい、その表情はどこか誇らしげだ。

 10年以上前、宴会の幹事は特にこのようなことは考えていなかったはずだ。だが、巷に健康情報が溢れていく中で、「四毒」の存在が多くの人に知られ、「私の不調は四毒を摂取していたからだ」という一旦の結論が導かれる。そして意識の高い彼らは「四毒を回避したら体質が大幅に改善しました」と暗に自慢し、こちらにも「改宗」をちらつかせてくる。さらに、その後フェイスブックに「今日の飲み会は散々な目に遭った。出てくるもの出てくるもの四毒ばかり。私はほとんど食べず、コンビニで鮭おにぎり買った(笑)」みたいなことを平気で書いたりもする。

 テニスプレイヤーのノバク・ジョコビッチがグルテンフリーを公言しながらあれだけ強い、ということも「四毒」普及には影響を与えたのかもしれない。だが、新聞の訃報欄を見ると90代以上の人が多く掲載されている。相当長寿なわけで、この人達は「四毒」なんて言っていたのだろうか?

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