メディアには在日枠がある、逮捕されても名前が報道されない… 今でも謎な「在日コリアンが日本を牛耳っている」論を振り返る(中川淳一郎)
目下、ネット炎上の歴史を振り返る本を書いております。6月にはSNSで、近現代史研究者の辻田真佐憲氏と、2006年~2015年の炎上案件を語り合う生配信を行います。
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そんなわけで案件を選んでいるところですが、今でもよく分からないのが「在日コリアンが日本を牛耳っている」という論がネット上でまかり通った件。ちょうど06年~15年の話です。
この時期は「失われた10年」から「失われた20年」へと突入していたころ。日本経済が停滞し、給料も上がらなかった時代です。中国がGDPで世界2位に躍り出て、「冬のソナタ」で韓流ドラマが人気を確立、東方神起や少女時代などK-POPグループが紅白歌合戦に出場します。日本は東アジアの覇者としての存在感が低下していました。
06年発足の「在日特権を許さない市民の会」(在特会)は、在日の人々にさまざまな特権があると唱えました。そこにネット上の韓国嫌いな人々が他にも特権があるとして、怪しげなものを次々と挙げていきます。いわく、在日は強大な力を政財界・メディアに有し、日本人を支配している。水道代が無料で、司法試験の1次試験は免除、逮捕されても名前が報道されない。そんな言説が横行したのです。
さらに、メディアには在日枠があり、主要メディアには必ず韓国を優遇、これに基づいて日本をおとしめる役割を担う者がいるということに。そして燃え上がったのがフジテレビです。11年7月、俳優・高岡蒼甫(当時)が、フジの番組に韓国人が出過ぎているから自分はもう見ない、とSNSで発言したのが発端でした。
その後、彼は所属事務所を解雇されますが、「国士・高岡同志を救おう!」的にフジに対して8月にデモが2回発生。この年以降、フジは目の仇にされ、日本人を洗脳し、韓国に支配させるための手を打っているという説まで出ます。
その“証拠”がすさまじい。「笑っていいとも!」のアンケートで「好きな鍋」の1位が20、30、40、50、60代で「キムチ鍋」になったこと。フジの夏の祭典「お台場合衆国」で人気の「冷やし」メニュー1位が「冷やし韓国」になったこと。これだからフジは反日的だと。
しかも、フジが放映したドラマのセットに「韓信匍匐」という貼紙があったため「韓国を信用しろと言うのか!」とキレる人々が登場。コレ、「韓信の股くぐり」ですよ。劉邦配下の名将・韓信が、愚連隊紛いの男にからかわれ、股の下をくぐった故事によるもので「大きな目標のため一時の屈辱に耐える」の意です。
当時の在日コリアンの人数は約60万人。1人あたり日本人200人を支配する計算になります。かくも荒唐無稽な論が多かったのですが、日本人が虐げられていると主張する人にはすべて重要な証拠でした。
これらを批判すると「お前は在日だ」なんて言ってきました。彼らの得意技「国籍透視」です。さらに、在日の姓の特徴は、見た目が「左右対称」であるとも。
となれば永野芽郁と不倫した田中圭なんて完全に左右対称ですね。「山本」「森田」「小林」「高木」「谷口」など、みんな対称です。
在日と韓国に向けた批判を生きがいとした人々が多くいた時代があったのです。