「校閲」に向いているのはどんな人? 「ことばの番人」がホンネで語る“成果が見えない仕事に耐えられる”ことが大事な理由

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 こんにちは、新潮社校閲部の甲谷です。

 今回もクイズからです。次の漢字のうち、現在の常用漢字(=中学校卒業までに習う漢字)が2つあります。どれとどれでしょうか? 制限時間は特にありません。では、どうぞ!

 1.畝 2.匁 3.橙 4.萌 5.罠 6.璽

 さて、今回は「校閲に向いている人とはどういう人か?」というテーマです。

 私自身も15年間、校閲という仕事をやってきて、「自分は校閲に向いていないのではないか」と悩むことも多々ありました。今でも「向いている」と自信を持って言うことはできませんが、同僚らの助けもあり、何とかこの仕事に食らいつき、スキルアップしていこうともがきにもがいて、頂上の見えない山道を日々、少しずつ登り続けているような感覚です。

 そんな中で私が考えてきた、「校閲に向いている人」「校閲に向いていない人」について、正直なところを書いていきます。ネガティブで辛辣な書き方になってしまうかもしれませんが、ご了承ください。

校閲業で人脈は広がる?

 まず、「仕事上で人脈を広げたい」と考えている人は、この仕事には向いていないと私は考えています。人脈を広げたいのであれば、世の中にはそれに適したたくさんの仕事があるからです。

 もちろん、出版社や新聞社などの校閲部員でもフリーランスの校閲者であっても、色々な編集者やライターさん、作家さんと懇意にしたり、交流を深めたり、ということは可能ですし、実際にそうなさっている方もたくさんいらっしゃいます。

 しかしそれは、仕事上で築かれた人脈というよりは、その校閲者のパーソナルな魅力や、それまでの経験によって個人的に(仕事から一旦離れたところで)築かれたものである場合が多い、と私は思います。

 そもそも校閲者は、場合によっては一日中、ほとんど誰とも話さずにゲラと(そして、自分と)格闘する日々を送っているわけですから、たとえば不動産の営業職の方などとは比べものにならないほど人との交流が少ないです(以前書いた「進行係」などの例外を除く)。

 多くの校閲者はこうした環境にあることを承知の上で、この仕事を志望すると思いますし、私もそうだったわけですが、特に10代~20代前半の若い方は、人生に多様な選択肢がある中で、職業としてあえて校閲者を選ぶことで、ご自身の「人脈を広げられる可能性」を狭めてしまわないか、立ち止まって考えてみても良いかと思います。

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