「生野菜には落とし穴も」「ゆでるよりもレンチンの方が…」 減少し続ける日本人の野菜摂取 認知症対策にもなる取り方とは

ドクター新潮 ライフ

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 野菜は体に良い。誰もが知っている常識である。だが足りない。日本人は、その野菜の摂取量が圧倒的に不足しているのだ。認知症対策にもなるという野菜を食べる量をいかにして増やすか。食べ方のコツから意外な調理法まで、専門家が伝授する「野菜の新常識」。【林 芙美/女子栄養大学栄養学部教授】

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 それは関係者にとって立て続けにショックをもたらす数字でした。

 まず、昨年8月に厚生労働省が公表した「令和4年国民健康・栄養調査」の結果では、1日あたりの野菜摂取量の平均値が20歳以上の男性で277.8グラム、20歳以上の女性で263.9グラムと、令和元年より男女ともに約10グラムも減少していたのです(注・令和2、3年は調査中断)。コロナ禍で「外食」が減り、「内食」の機会が大幅に増えたため、野菜摂取量も増えているのではないかと期待されていたのですが、逆の結果が出てしまったのです。

 そして昨年11月に公表された令和5年の調査結果では、男性262.2グラム、女性250.6グラムと、野菜摂取量はさらに減ったのです。内食が増えたとはいえ、冷凍食品や総菜を買うなどの食事の簡便化が進み、その習慣が定着していることなどが理由として考えられます。

「野菜は生で食べるべき」は正しい?

 厚労省が提唱している国民の健康に関する指針「健康日本21(第三次)」では、1日の野菜の目標摂取量は350グラム以上とされています。現実の摂取量はそれを100グラム前後も下回っている。つまり、日本人には圧倒的に野菜が足りていないのです。

 この下落傾向はもう止められず、諦めるしかないのでしょうか。私はそうは思いません。野菜に関する意外と知らない「新常識」を知ってもらえれば、リカバリーできる余地はまだあると考えるからです。例えば、「野菜を食べるなら生に限る」。野菜に含まれる栄養素を丸ごと摂取するための常識だと思われるかもしれませんが、これは「栄養学的には正しい」と同時に、「現実的には必ずしも正しくはない」ともいえるのです。

〈栄養教育学や健康科学を専門とする女子栄養大学栄養学部の林芙美教授は、健全な食生活は健康寿命の延伸にとどまらず、生活の満足感や幸福感を高めることにもつながるとの考えのもと、これまで食の研究・啓発活動を続けてきた。

 一連の活動の中で、昨年11月に『間違いだらけの「野菜」の食べ方』(監修)を出版した林氏が、より良き野菜摂取のための「傾向と対策」を語る。〉

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