なぜ算数の得意な子どもは中学受験で有利なのか プロ講師がむしろ「国語」を重視する理由…「年々低下している子供たちの能力」とは

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算数有利の中学入試に拍車

 安本氏の塾では、まずは簡単な文章を学習しながら語彙を身に付け、大人向けの長文を理解できるような素地を整えているというが、それでも入試で合格者の平均点が40点~50点台(100点中)というケースが多い国語の指導には難儀しているそう。

「多くの中学校が、『国語が得意』と言われている子供でさえも解けないような出題を続けているので、年々国語で点数を取りにくくなっており、結局は算数の得意な子供たちが合格を手にしやすい状況が生まれています」と、令和の中学受験について言及した。

難関校合格は厳しいハードルが

「これまでも多くの親御さんが『有名私立中学を経て難関大学に行く夢』を持って、中学受験に足を踏み入れてきました。成績上位の生徒はともかくとして、下位のクラスに在籍している生徒がそのレベルの中学に進学するのは極めて難しいです」

 安本氏は、予備校に通い始めたものの、当初の志望校を射程圏に捉えられなかった場合の対処法について、実例を交えながら次のように語った。

「今から6年前、『両親と同じ大学の附属中学に入りたい』という生徒を受け持っていたんですが、その子の成績では、極めて合格は難しくて。最終的に、その学校よりもやや難度の下がる大学の附属校に入学することになりました」

高校卒業までの6年間の過ごし方で決まる

 その時は、やや物足りなさを感じていたご両親に、安本氏は「彼女の現状に合った学校で、どう過ごすかが大切です」と諭して中学に送り出したという。その生徒は、学校の雰囲気に合ったのか、入学後もコツコツと勉強を続けて大学受験では、付属の大学よりも遥かに難しい上智大学外国語学部に合格した。

「中学受験の結果よりも、6年後には大学受験がある。難関中学の合格を手にした生徒であっても、その後燃え尽きてしまい、『入学後にやる気を失っている』という話を少なからず耳にすることがあります。中学受験や大学受験が人生のゴールではありません。『お子さんを社会で活躍できるような人材に育てていくにはどうすれば良いのか』を考えることが、本当の親の役割だと思います」

 昨今の中学受験は低年齢化しつつあり、小学校低学年から時間をかけて取り組むことが一般的になっているという。長い期間を費やすからこそ子供の未来を見据えた適切な判断が、受験生の親には求められている。

 1本目【中学受験のプロが明かす“後悔しない”志望校選び 「新設校の特進コース」と「硬派な校風の伝統校」はどちらがおススメか】では、カリスマ国語講師の安本満氏が、中学受験校を選ぶ際に何が大切なのか、自身の経験を踏まえて語っている。

安本満(やすもとみつる)
最盛期の大手塾で14年半指導し、「カリスマ国語講師」として、生徒、保護者、同僚から圧倒的な支持を受ける。1999年に「塾とは先生のことである」とし、龍馬進学研究会を創立。2025年2月には、癌の治療のためにセミリタイアし、同塾の会長として余生を執筆に専念したいと熱望。5月8日にはアメーバブログで「中学受験最高の選択」を立ち上げ、話題を呼んでいる。

ライター・白鳥純一

デイリー新潮編集部

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