「うちの子は中学受験に向いていますか?」 親からの質問に“指導暦40年の塾教師”の意外すぎる返答…子供の中学受験を「過酷」にする親の特徴とは
出生数が70万人を下回る急速な少子化が進む現在の日本で、首都圏エリアの私立・国公立中学を目指す受験生の数は、増加の一途を辿っている。親世代がまだ中学受験生だった1980年代後半から、国語の講師として中学受験生の指導にあたってきた龍馬進学研究会(千葉県船橋市)の安本満氏に、熾烈な競争を強いられる令和の中学受験の現状や、受験生との向き合い方について語ってもらった。(3本中2本目)
【写真】「中学受験は子供への最大のプレゼント」と語るカリスマ講師の安本氏
中学受験の現状
2025年の首都圏における私立・国立中学入試の受験者総数は、5万2300名。前年から100人ほど人数を減らしたものの、受験率は過去40年間で2番目に高い18.10%を記録(首都圏模試センター)しており、上位校の入試では毎年熾烈な競争が繰り広げられている。
「かつての中学受験は、開成や筑波大附属駒場といった難関校への合格が、東大合格に向けた一番の近道であり、それはやがて将来の出世や安定した収入につながるという価値観の下で成り立っていました。しかし、時代の変化と共に価値観は多様化し、最近では東大を卒業したからといって、出世が約束される社会ではなくなりつつあります。それなのに、かつての中学受験の姿を知っている親世代はかつてのような価値観を持ち続けていて、今も前時代的な競争が残ってしまっている。それが令和の中学受験の実情だと思います」
そのように語る安本氏は、授業内で実際にあったエピソードを明かした。
なぜ受験勉強をするのか?
「君たちはなぜ勉強しに来ているんだ?」
安本氏は夏休みのある日、毎日欠かさずに講習に通う小学6年生を前に、そう問いかけるという。間髪入れずに子供達が「良い中学校に通うためです!」と威勢よく答えると、安本氏はその後も質問を続けた。
“良い中学”が何を指すかは置いておいて、「何のためにそこに行くの?」と問いかける安本氏に、子供たちは徐々に口数を減らしつつも、「良い高校、良い大学に行くために」と、答えを口にしていく。そして答えは「良い就職をするためだ」と言うことになった。
「何のためにいい就職をするの?」を尋ねると、子供たちはきょとんとした表情で黙り込む。ゴールはここまでなのだ。
「お金を稼いで、家を買うためです!」
ある生徒が勇気を持って声を上げると、安本氏は再び彼に質問を投げかけた。
「そうか、将来家のローンを支払うために、今頑張って勉強しているってことだな?」
生徒は「あっ!」と叫んで少しばつの悪そうな顔を見せたきり、「こんなはずじゃなかった」という顔をして黙り込んだ。
子供の可能性を尊重してほしい
上記は教師と教え子の微笑ましいやりとりのように思えるが、子供たちの背景にあるのは「親が理想とする価値観だ」と安本氏は指摘する。
「時代は変わっているのに、両親は形骸化してしまった価値観を今も持ち続けていて、時に子供の自分らしさを阻んでしまう。親のプライドのために、親が考える“子供に相応しい学歴”をつけさせようとしていることもあるということです。受験生を持つご両親には、あくまでも子供たちの人生であることを忘れずに、進路を選んであげてほしいと思っています」
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