変わる中国人の「都内マンション購入事情」 数字が語る“買い方”と“素顔”の変化

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在留資格から探る「東京に住む中国人」

 では、そうした物件を実際に購入しているのは、どのような人々なのか。その手がかりは、日本に滞在する中国人の在留資格のデータに表れている。

 日本にマンションを購入し、実際に移り住む中国人の在留資格は多岐にわたる。

 主なものとしては、「永住者」や「留学」のほか、高度な専門知識や技術を持つ人材に与えられる「高度専門職」、企業経営者や投資家に与えられる「経営・管理」、日本人の配偶者や永住者の配偶者などに与えられる「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」がある。

 また、就労を目的とする場合は、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザを取得するケースもある。

 次の円グラフは、東京都に在住する中国人の在留資格別の割合を示したものである。

 最も多いのは「永住者」で、全体の33%を占める。以下、「留学」(25%)、「技術・人文知識・国際業務」(15%)、「家族滞在」(9%)と続き、これら4つの在留資格で8割超(82%)を構成している。

「単なる投資」ではなく、「住生活そのもの」に移る軸足

 では、どの在留資格の人口が増えているのだろうか。在留資格上位4位の人口の推移を比較した。

「永住者」は一貫して増加傾向にあり、2023年末には9万人に達しようとしている。「留学」は、東日本大震災を機に一時減少したが、回復基調に転じた後、コロナ禍で再び落ち込み、現在は持ち直して6万人を超えた。

 日本が少子高齢化に直面する中で、今後の社会を支える多様な人材の受け入れや定住のあり方が重要な課題となっている。そのような中、都内では中国出身の「永住者」が年々増加しており、存在感を増しつつある。

 たとえば、東京の一部の有名公立小学校では、在日中国人家庭からの入学希望者が増加傾向にあるとされる。こうした動きの背景には、中国人富裕層の教育への関心の高まりや、将来設計への考え方の変化がありそうだ。

 中国人が日本の不動産を取得する動きが、「単なる投資」ではなく、「住生活そのもの」に重心を移しつつある兆候とも言える。記事前編では都心3区よりも「大田区」や「板橋区」の需要が高い可能性があることを紹介したが、背景にはこうした中国人の購入意識の変化があるといえるかもしれない。

 本稿は、そうした現象の一端を、あくまでエビデンスベースで可視化しようとする試みにすぎない。感情や先入観ではなく、事実に基づく認識が、今後の議論の出発点となることを願いたい。

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 この記事の前編では、「いま東京で最も中国人に買われている場所」はどこなのか、マン点氏のレポートをお届けしています。中国人投資家向けの不動産サイトのデータを分析して分かった“興味深い傾向”とは――。

【著者プロフィール】
マン点(まんてん) マンションアナリスト。一級建築士。20年以上続けている不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」の管理人
X(旧Twitter):https://x.com/1manken

デイリー新潮編集部

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