派閥争いの陰謀で「不倫犯」にされた 妻も味方でなくなって…44歳夫「社内結婚」の大失敗
隣の部署の先輩に心を許し…
誰に相談すればいいのか。自分の保身より社員全体のこと、ひいては会社のことを考えたつもりだったが、彼自身も部下たちから突き上げられることがあった。それに対して彼の見方の部下たちが水面下で抗戦する。表だっては通常の業務を続けているのに、実は内部争いが激化していった。
「隣の部署で、亜紀の先輩にあたる茉耶さんという女性がいるんです。うちに遊びに来てくれたこともあり、僕も慕っていたんですが、あるとき彼女が『なんだかつらそうね。大丈夫?』と声をかけてくれて。たまには1杯どうと言われ、気が緩んだんでしょうね、つい彼女に愚痴をこぼしてしまった」
彼女は社内の勢力図に妙に詳しかった。以前、人事にいたから今もいろいろ情報が入ってくるのと教えてくれた。今、延彦さんがどう対応すればいいのかについてもアドバイスをくれたのだが、考えてみたら「とにかく巻き込まれたくない」のが彼の本音だった。
「だから僕はふりかかってきた火の粉は払うけど、それを他に押しつけたり、自分から火の粉をばらまくようなことはしたくない。企業人である前に、ひとりの人間として正しく行動したいと言ったんです。茉耶さんは『そうよね。あなたはそういう人だものね』と理解は示してくれたけど、亜紀のためにもうまく立ち回ってと言われました」
水面下のごたごたはなかなかおさまらなかったようで、延彦さんはときどき茉耶さんから情報を得たり愚痴を聞いてもらったりしていた。そうこうしているうちに亜紀さんが多忙な部署に異動となった。家庭重視で生活したいからと残業のない部署にいったのに、首を傾げざるを得ない人事だった。
「茉耶さんもおかしいと言っていました。その後ですよ、とんでもないことがあったのは」
そして“事件”は起きた
あるとき茉耶さんから大事な話があるとホテルの部屋に呼び出された。どうしても人に聞かれたくない情報だという。迷いながらも延彦さんは出かけていった。ルームサービスをとって部屋で飲みながら話していたのだが、茉耶さんがその日はやけに酒を勧めてくる。もともとお酒に強くない延彦さんはすっかり酔って睡魔に襲われ、いつしか眠り込んでしまった。
「おい、と起こされたんですが、目を開けると、僕と上司を敵対視しているAという役員が立っていた。どうして彼がここへと思ったら、茉耶さんの着衣が乱れている。上半身、裸同然でした。てっきりAがそういうことをしたんだと思い、何をしているんだと言ったら、『おまえがやったんだろう』とAが言うわけです。わけがわからなかった。すると茉耶さんが『ここは穏便に』なんて言ってる」
社内ハニートラップだったのだ。茉耶さんと役員Aがつながっていて、延彦さんは騙された。そしてこともあろうに茉耶さんの着衣が乱れた状態の写真が亜紀さんに送られていた。
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