派閥争いの陰謀で「不倫犯」にされた 妻も味方でなくなって…44歳夫「社内結婚」の大失敗

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 豊川延彦さん(44歳・仮名=以下同)は、正義感の強い父に育てられた。父は出世争いから外れながらも誠実に働き続けたが、延彦さん自身もまた、愚直に仕事に向き合い、社内で信頼を得ていった。30歳になるころ結婚願望が芽生えたものの、恋愛感情が強すぎて失敗してきた過去の経験から、同僚の亜紀さんと恋人関係になり「楽しくやっていけそうだから」とプロポーズ。「その言葉が気に入った」と彼女も受け入れたのだが……。(前後編の後編)

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 結婚してから2年目に亜紀さんが妊娠した。無理をしないで楽しく生きていきたかった彼は、子どもはひとりでいいと思っていたという。ところがなんと双子だった。

「二卵性の男女の双子でした。うれしかったけど、双子を育てるのは大変そうだなと覚悟しましたね。でも結局、大変なことより楽しいことのほうが大きかった。同じ環境で生まれているのに、性格はまったく違う。顔もあまり似てない。子育ては楽しかったんですが、ちょうどそのころ僕は仕事が超多忙になっていったんですよ。もっと家庭に関わりたかったけど、亜紀は状況をわかってくれていたから自分から残業のない部署に異動希望を出してくれた。それでも時間的にも物理的にも大変だったと思う。僕の母親も頻繁に来てくれました。母は亜紀と気が合ったみたいで、ふたりはすっかり仲よくなって……」

 延彦さんが帰宅すると、妻と母が仲よく話し込んでいることも多かった。子どもが小さいうちは妻も頼るところが多いほうがいいし、妻と母の関係に悩む男性もいるというのに自分はラッキーだったと彼は感じていたという。

社内で足の引っ張り合いがはじまった

 子どもたちが小学校に入ったのは彼が40歳のときだった。そのころから職場での彼の立場が「どこか変わっていく」のをひしひしと感じていたという。ことの発端は彼をいつも気にかけてくれていた上司が役員になったことだった。それをよしとする人、反発する人、社内にはさまざまな意見があり、いくつかの派閥があった。延彦さん自身は派閥など気にしたこともなかったのだが、周りがどう見ていたかはわからない。

「そもそも会社の理念とか社員の目的なんて、みんな同じだと思うんですよ。やり方は違っても、企業というのは利益を上げること以外に社会的な責任とか社会貢献とかがなければいけないと僕は思っています。でも会社の利益以上に個人の利益を上げたい人もいるし、名誉にしがみつく人もいる。自分の仲間内だけを大事にする人も。政治の世界を見ていると、あれが縮図なのかもしれないなと思います。企業も政治も、そんな視野の狭いことをしていてはいけないんですけどね」

 水面下で、役員たちの足の引っ張り合いや勢力争いが始まっていたようだ。延彦さんの上司もまた、そこに巻き込まれていった。見えないところで何があったのか、延彦さんにもよくわからないのだが、あからさまに彼の仕事に妨害が入るようになった。そのころ彼は営業2部の部長補佐で、実質、部を仕切っている立場だった。

「ライバル会社が妨害しているのかと思って、いろいろ作戦を立て直したりしていたんですが、何かがおかしい。結局、内部からの妨害だったとわかったときには例の上司が失脚しかけていた。どう動けばいいのか、誰が味方なのか、ほとんどわからないまま仕事を進めていくしかありませんでした」

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