44歳男性が「不倫の罠」にハメられるまで 同僚婚した際の“プロポーズの台詞”がすべての始まりだったのか
週刊誌にすっぱ抜かれようが、LINEのやりとりが流出しようが、有名無名を問わず不倫をする人はするものだ。それが「恋」であるなら、ある意味でいっそ清々しいことさえある。自分の置かれた状況を鑑みることもなく、恋に溺れることができるのは心が純粋であるからだ。人はそれを「大人げない」と言うが、大人げなくてもいいではないか。本来、恋はそれほど楽しいものなのだ。
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だが恋心はあっても、その恋が恋としてまっとうされないケースもある。気持ちをないがしろにされたような、あるいは下心を見抜かれて騙されたようなことになると、虚しさだけが残るのかもしれない。(前後編の前編)
豊川延彦さん(44歳・仮名=以下同)は、この数年、波瀾に満ちた日々を送ってきたと語る。頬が削げてやつれており、「まだ事態をきちんと把握できていない」と言う。延彦さんの職業を明かすことはできないのだが、彼にとって大事だった仕事、妻との関係、さらに恋愛がらみでの“事件”など、心身をすり減らすようなことが一気に起こったそうだ。聞いているこちらもなかなか整理がつかないほどだった。
正義感が強すぎて出世できなかった父
東京に生まれ育った延彦さんの父はごく普通のサラリーマン、母は近所の建築事務所のパート事務をしていた。2歳年上の姉とは仲がよく、「決して贅沢はさせてもらえなかったけど、父のボーナスが出ると近所のお鮨屋さんで好きなものを食べさせてもらった」という。父は大卒で入社、一時期は幹部候補だったらしいが、母によると「正義感が強すぎて、社内では疎まれているところがあった」らしい。
「父の言う正義感は、机上のものではないんです。たとえばいじめられている子を目の当たりにしたら、とりあえずその場で命を張って助けろ、というような感じ。父はずっと剣道をやっていたので、武道の精神を大事にしていたし、僕もやらされました。ただ、僕は途中で剣道より空手が好きになって剣道はやめてしまったんですが」
堅実で実直で、それでもどこか臨機応変なところもあって魅力的な父親だったと延彦さんは言う。父は出世争いから脱落しても、忠実に仕事をこなしていったそうだ。延彦さん自身は「そこまで人間ができていない」とつぶやいて目を伏せた。
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