44歳男性が「不倫の罠」にハメられるまで 同僚婚した際の“プロポーズの台詞”がすべての始まりだったのか

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彼女を追いかけてフランスまで

 中学、高校時代はサッカー選手として活躍した。もっともチームは弱かったので、高校時代は都大会にも出られなかったが、友人たちとは今もつながりがある。3年生になっても部活動ばかりやっていて最後は「追い出された」くらい、サッカーが好きだった。その分、勉強は適当になってしまい、1年浪人して、ようやく私立大学に入学した。

「学生時代も楽しかった。同好会でサッカーを続けていたし、アルバイトにも精を出しました。初めて恋もした。結局、フラれましたが、女性を好きになるってこんなに気持ちが乱れることなんだと知りました。経済学部でしたが、恋をしたことで文学に目覚めて、やたらとフランス文学などを読んでいましたね。3年生のとき、たまたまフランスからの留学生がいたので、彼女と積極的に会話をして少しフランス語ができるようにもなった」

 夏休みに帰国した彼女を追ってフランスまで飛んだこともある。意外と情熱的なのだ。「若かったから」と彼は照れるが、実際には「もう二度と日本には帰ってこないという勢い」で追っていったらしい。だが「友だち止まり」で終わった。学生時代の恋はことごとくうまくいかず、男として魅力がないんだと落ち込んだこともある。思い返せば「落ち込むなんておこがましい話なんですけどね」と苦笑した。

 大学を出て就職したのは、誰もが知っている大企業ではなかったが、実績と歴史のある会社だった。いい先輩や上司に恵まれてのびのびと仕事を覚えていった。

「社会人になって、自分の責任で生きていかなければいけないんだと痛感しましたね。僕はエリートでもないし、会社から期待されて入社したわけでもない。出世なんて考えてもいなかった。ただ、せっかくなら会社に寄与できる人材でありたいとは思いました。サッカーと同じですよね、自分が活躍することによってチームにメリットを及ぼすことが重要。自分だけが目立てばいいというわけではない」

他部署に引き抜かれて

 そんな気持ちで仕事をしていたからだろう、先輩たちにはかわいがられた。新人のうちは誰から何を頼まれても気持ちよくこなしていくと決めていたので、彼は重宝にされた。

「同期からは、あんなにホイホイなんでも引き受けていたら身がもたないよと言われましたが、僕は仕事が楽しかったんです。学生時代のアルバイトも好きだった。どんな状況でも楽しめる才能があるんじゃないかと当時は思っていました。うぬぼれていましたね」

 営業部に配属されたのだが、営業は1部と2部があった。最初に勤めたのは1部、そして2年足らずで2部に異動となった。2部の部長がどうしても延彦さんに来てほしいと1部の部長に頭を下げたという噂が流れた。そんなに才能があるわけでもないし、仕事ができるわけでもないのに、なぜ自分に白羽の矢が立ったのかわからなかった。

「でもうれしかったですよ、やはり。認められて一人前になったような気分でした。あの頃は本当に必死に働いたなあ。よけいなことを考えずに仕事と向き合って、どうしたらいい仕事ができるかだけに集中していました。もっと仕事上の知識がほしかったし、先輩たちのスキルも盗みたかった。どっぷり仕事にはまっていましたが、20代のうちはそれがいいと思っていました」

 とはいえ先輩たちと飲みにも行ったし、週末は学生時代の友人とサッカーをすることもあった。「どこにでもいる、生活を楽しんでいる若い男性」だった。

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