44歳男性が「不倫の罠」にハメられるまで 同僚婚した際の“プロポーズの台詞”がすべての始まりだったのか

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求婚に「どうして私なの?」

 30歳になるころ、同期が結婚しはじめた。高校、大学時代の仲間も軒並み結婚していく。社内の2年先輩が結婚し、新婚家庭に遊びに行ったことがある。好きな人と家庭をもつのはごく自然なこと、自分も結婚して楽しい家庭を作ろうと延彦さんは前向きになった。

「当時、仲よくしていた同期の亜紀という女性がいたんです。友だち関係が続いていたけど、結婚するなら恋愛感情が強くないほうがいいんじゃないかと、過去の経験から学んでいたんですよ。恋愛感情が強すぎると僕の場合、妙な言動に走る傾向があったから。たまたま亜紀が異動で隣の部署にやってきた。顔を合わせるうちにランチに行こうとか飲みに行くかとかどちらからともなく誘い合うようになっていきました」

 友だち関係から恋人関係になるのに時間はかからなかった。社内恋愛ということもあって、彼は半年ほどで結婚してほしいと伝えた。

「そのとき、亜紀が『どうして私なの?』と聞いたんです。彼女自身も燃え上がるような気持ちがなかったんでしょうね。亜紀となら一生、楽しく仲よくやっていけそうだからと答えました。恋ではなく、最初から愛だったんだとも言ったような気がする」

 女性にすれば、「きみしかいないんだ、きみがいなかったら生きていけないんだ」と激しく求められるほうがうれしいかもしれないが、長く一緒に生きていくことを考えれば、「楽しく仲よくやっていけそう」というのは、相当強いプロポーズなのではないだろうか。亜紀さんは延彦さんと同じタイプだったのだろう。

「その言葉が気に入ったと言われました。あとから聞いたんですが、亜紀のおねえさんは大恋愛をして結婚したのに、半年足らずで実家に戻ってきてしまったんだそうです。大恋愛なんて結末はろくなことにはならないのよと笑っていました。だから僕のプロポーズは心に響いたって」

 延彦さんは31歳になる直前に、ひとつ年下の亜紀さんと結婚。共働きの生活をスタートさせた。

「穏やかに楽しく生きていきたい。人としてまっすぐに。僕が考える理想の人生はそういうものでした」

 ところがそれから10年後、彼は思いもよらなかった人生を歩くことになる。

 ***

【記事後編】では、情熱を注いできた職場の環境、そして家庭をも一気に崩壊させた“事件”が綴られる。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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