「40歳以上の5%が緑内障で、9割は無自覚」 リスクが高い人の五つの特徴とは

ドクター新潮 ライフ

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一度障害を受けると修復が難しい

 緑内障がどういう病気かより詳しく説明しましょう。

 緑内障は、眼球を満たす液体の一つである房水の排出が悪くなり、眼球内の圧力(眼圧)が上がって、視神経がダメージを受け、視野欠損や狭窄が徐々に起こる病気です。小児期に発症した病気に起因する小児緑内障、ほかの病気や目のけが、服用している薬の影響で眼圧が上昇する続発緑内障もありますが、最も多いのは眼圧上昇の原因が分からない原発緑内障です。本記事で取り上げる緑内障は、すべて原発緑内障です。

「眼圧が上がる」といいましたが、日本人は、正常範囲内の眼圧であるにもかかわらず、その人の目に適した眼圧より高いことで視神経がダメージを受ける正常眼圧緑内障が多数を占めることが分かっています。

 緑内障がかなり進行すると、両方の目に見えないところが増えカバーしきれなくなります。そのため「運転中、信号を見落とす」「人や物にぶつかる」「階段やバスのステップを踏み外す」「文章の文字や行を読み飛ばす」といった症状も起こりやすくなります。

 視神経は一度障害を受けると修復が難しく、治療を受けても「見えなくなった部分が、また見えるようになる」ということはありません。そのため緑内障の治療では、眼圧を下げて視神経にこれ以上ダメージを与えないようにし、今の視機能を維持することを目指します。緑内障の治療のほとんどは点眼薬で、十分な効果が得られない場合や、副作用で点眼薬を継続できない場合は、レーザー治療や手術を検討します。緑内障の型によっては最初に手術する場合があります。これについては後ほど触れます。

よくある勘違い

 緑内障といえば、似た名前の目の病気として白内障があります。この緑内障と白内障、混同している方が多いです。対比させて覚えておきたい緑内障と白内障のポイントは、次の通りです。

・緑内障は継続的な治療が必要

・白内障は手術で視力を取り戻せる

 緑内障の場合、放っておけば眼圧が上がって視神経を傷つけてしまうため、「治療はここで終わり」ということはありません。これに対し白内障は、カメラのレンズの役割をする水晶体が濁って見えづらくなる病気であり、手術で水晶体を取り除き、眼内レンズに入れ替えれば、クリアに見えるようになります。

 ですから、治療開始のタイミングも異なります。

・緑内障は、早期発見、早期治療が鉄則

・白内障は、個人差はあるものの、日常生活に支障が出てきたタイミング

 続けて、よくある勘違い「その1」をご紹介しましょう。それは「緑内障は手術で治る」です。緑内障と白内障の混同から起こっている勘違いで、緑内障は残念ながら手術しても回復はしません。緑内障で手術を行う場合、目的は眼圧を下げることです。

 高齢になれば、緑内障、白内障どちらも持っている方がたくさんいます。そういった患者さんで最近増えているよくある勘違い「その2」が、「白内障の手術で見えるようになった。緑内障も治った」です。

 白内障手術で濁った水晶体を眼内レンズに替えると、それはもう素晴らしくよく見えるようになります。「世界が一変したようだ」と感激される方も少なくありません。そうやってよく見えるようになったことで、緑内障も治ったと思い込んでしまい、緑内障の治療を自己判断でやめてしまうのです。しかし、白内障の手術で視力は戻っても、緑内障で起こっている視神経のダメージは治っていません。緑内障の治療は続行しなければならないのです。

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