「白雪姫」は実写化すべきでなかった…大コケを招いた「ポリコレ以前」のつまらなさとは

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物語の根幹部分に加えられた変更点

 失敗の大きな要因は、1930年代の原作アニメーションを、現代の価値観に合わせようとしすぎたことにあるという。

「もちろん、そうしたアレンジは今回が初めてではありません。これまで成功したディズニー作品でも、現代の観客の価値観に合わせ少しずつ変更が加えられていました」(猿渡氏)

 例えば、女性がただじっと誰かの助けを待っているだけ、という設定は、今の価値観には合わない。「アナと雪の女王」のアナや「モアナと伝説の海」のモアナのような、主体性のある女性像が求められるのである。

「ただ、『白雪姫』の場合は原作からの変更点が多すぎました。もともとは白雪姫が白馬の王子様に救われるというお話ですが、それも現代の価値観では相容れないため、変える必要がありました。結果として、実写版では白雪姫がリーダーになる物語に変更されています」(同)

 近年のディズニー作品に対するポリコレ的な批判は珍しくないが、今回の『白雪姫』の失敗は、それ以前に“物語そのものとしての魅力を損なってしまった”という根本的な問題があったということか。

「白雪姫が結ばれる相手も王子様ではないのです。その美しい容姿から身分の高い王子さまに見初められる、というストーリーは現代で言えばルッキズムそのものですからね。そのため実写版では、白雪姫は王子様とではなく、泥棒と結ばれるストーリーになっています。容姿や身分ではなく、心と心で恋に落ちる展開になっています」(同)

 そのために、原作アニメーションの「見せ場」の1つが丸々なくなっているという。

「ストーリーの行きがかり上、有名な挿入歌『いつか王子様が』が使えなくなってしまったのです。熱心な原作ファンにとっては相容れない変更点と言えます」(同)

“原作選び”の時点で失敗だった

 では、もし仮にやり直せるのであれば、

“この映画は1937年のアニメーション版を忠実に再現した内容となっています。映画内の描写は現代の価値観にそぐわない点もあるかと存じますが、オリジナル版への敬意を払い、あえてそのままにしてあります”

 そのように断った上で、元々のストーリー通りに作るべきだった、ということなのだろうか。

「いえ、それは難しいでしょうね。どう断りをいれようが、現代において『お姫様が王子様に美貌によって見染められて幸せになりました』という物語が受け入れられるのは難しいからです」(猿渡氏)

 ちなみに、原作で白雪姫が「7人の小人」の家を掃除してあげるシーンは、実写版では白雪姫が小人に掃除をしてもらうシーンへと変更されているが、この「小人」の登場についても、軟骨無形成症で身長132センチの俳優として知られる、ピーター・ディンクレイジ氏から批判的な意見が出ていた。

「私は、映画作りにおいて多様性への配慮はなされるべきという立場です。ただ、そうした立場から見ても、1930年代の価値観で作られた作品を、現代向けに作り変えるのは、さすがに無理があったように思えます。つまり、今回の大失敗は“原作選び”の時点から既にはじまっていたのです。ディズニーは白雪姫を『1930年代の作品』として、そのままそっと大切にしておくべきだったのです」(同)

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