巨額の赤字が話題のNHKがガラリと変わる!? 来年の新会長と政界 歴代会長の“功罪”
前田前会長の悲劇
現在のNHKは受信料の値下げとそれに伴う赤字を抜きには語れない。下げたのは前会長の前田晃伸氏(80)=任期2020年1月~2023年1月=である。元みずほフィナンシャルグループ社長・会長だ。
前田氏は故安倍晋三元首相の色が鮮明だった。安倍氏を囲む大物財界人の集まり「四季の会」のメンバーだったことからもそれは分かる。
ほかにも前田氏の後ろ盾はいた。安倍氏の同志で、NHK会長人事に極めて強い影響力を持っていたJR東海・故葛西敬之名誉会長である。前田氏の味方は超重量級だった。
前田氏が3年の任期中に手掛けた改革は値下げだけではない。管理職希望者には選抜試験を課した。一方で50歳から56歳の職員を対象に早期希望退職の募集を行った。
一定の年齢に達したら、管理職ではなくなる役職定年制も導入した。約1万人の職員の37%を占めていた管理職を25%に減らした。
リストラである。そのせいで職場の空気が悪くなったようで、1カ月に20人以上が退職するようになった。前田氏は恨まれただろう。
月刊誌『文芸春秋』の2022年6月号には匿名の職員たちによって書かれた前田氏への批判文が載る。タイトルは「前田会長よ、NHKを壊すな」。全編が厳しい内容だった。
前田氏は窮地に立たされたが、後ろ盾になってくれるはずの安倍氏は2022年7月、凶弾に倒れた。葛西氏も同じ年の5月に病気で他界した。前田氏は2023年1月に退任したとき、孤立無援と言っていい状態になっていた。
前田氏のNHK内での立場がはっきりとしたのは、退任から半年後の2023年7月。経営委員会によって退職金の減額が決められた。BS関連予算に対するルール違反が理由だった。
会長の退職金の減額は極めて異例。前田氏は「冤罪、デッチ上げ」などと反発したが、どうにもならない。
前田氏による人事制度改革も見直されてしまった。受信料値下げこそ残ったが、多くの前田改革が白紙になっていった。
来年1月に新会長になるのは誰か。改革に挑むのは並大抵のことではない。かといってプロパーと融和してしまったら、外部から起用される意味が薄らぐ。
あるいは6人目の外部からの起用である稲葉氏が、初の続投となるのか。それを決めるのは岸田氏の政治力だろう。






