巨額の赤字が話題のNHKがガラリと変わる!? 来年の新会長と政界 歴代会長の“功罪”

エンタメ

  • ブックマーク

尾を引く「おむすび」

 NHKによる番組のネット配信が今年度中に始まる。スマホやパソコン、モニターを持っているだけでは支払い義務が生じない。ユーザーがアプリをダウンロードし、登録を済ませた時点で、初めて契約関係が生まれる。金額は地上契約と同じ月1100円だ。

 NHKと動画、どちらが得か。簡単に比べてみたい。まずニュースとドキュメンタリーはNHKの完勝だ。

 利用者の要望に応じて映像が提供されるオンデマンド性は動画の圧勝に違いない。またユーザーが喜びそうな作品を常に用意しようとするサービス性も動画のほうが上だろう。

 現在のNHKは無謬主義が目に付く。象徴例は朝ドラこと連続テレビ小説の前作「おむすび」である。朝ドラの史上最低視聴率を記録した。

 期間平均の視聴率は世帯が13.1%で、個人視聴率は7.4%だった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。内容を讃える視聴者もいたが、SNSなどで酷評する人が多かった。

 NHKに寄せられた声も極めて厳しかった。同局「月刊みなさまの声 3月号」によると、好評意見が559件だったのに対し、厳しい意見は3倍以上の1762件もあった(2024年9月30日~25年3月30日)

 視聴者の不満は相当溜まったはず。しかしNHKは「おむすび」を徹底的に擁護した。批判する人はドラマが理解できないのだと言わんばかり。実際、そう思っていたのではないか。

 視聴率が著しく低いことについては「BS、再放送、動画のNHKプラスもあるから」。視聴者側の観るスタイルが変わったから、地上波の視聴率が下がったのであり、作品側のミスは何一つ認めなかった。

 首を捻った。BSと再放送に食われたとのことだったが、放送条件が同じ前々作「虎に翼」の期間平均は世帯が16.8%、個人が9.4%だった。

 NHKの説明を額面通りに受け取ると、「虎に翼」から「おむすび」に変わった途端、朝ドラをBSと再放送で観る人が急増したことになる。

 現在の「あんぱん」は世帯約15%、個人約8%で推移している。再び地上波で観る人が増えたということなのか。

「おむすび」がBS、再放送で観られているというのなら、そのエビデンスを示すべきだった。簡単なことだったはずだ。

 制作費の原資のほとんどは受信料である。どれくらいの人が観たかを知るくらいの権利は視聴者側にあるのではないか。

 そもそも「おむすび」で最も問題だったのは低視聴率ではない。観る側の不満や疑問に対し、NHKが適切なアナウンスを行わなかったことが問題だった。批判する視聴者は置き去りにされた。

「あんぱん」の質の高さを否定する人はいないのではないか。だが、視聴率は伸び悩んでいる。その一因も「おむすび」にあると見る。

「月刊みなさまの声」でも分かる通り、「おむすび」には多くの人が不満を抱いた。それなのにNHK側は一貫して自画自賛したから、視聴者の一部は朝ドラというものに冷めてしまったように思う。制作者と視聴者が共有する小宇宙が壊れた。朝ドラの信用が元通りになるまでには少し時間がかかりそうだ。

次ページ:前田前会長の悲劇

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。