「怪しい健康食品」はどうすれば見抜ける? トクホ、機能性表示食品はどちらを選ぶ? 専門家が徹底解説
経済力は落ち、競争力も失われ、沈みゆくニッポン。そんな中で、胸を張れるものがあるとすれば平均寿命世界一を誇る「健康」だ。とりわけ、わが国の健康食品は実に多種多様で、壮健な体づくりに役立っている。しかし、なかには命を奪う怪しい商品も……。【長村洋一/薬剤師・薬学博士】
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【写真を見る】「怪しい健康食品」といえば、昨年死亡事故を起こした「あの商品」
内閣府消費者委員会の調査アンケートによれば、約6割の消費者が健康食品を利用しています。では皆さんは、何のために健康食品を摂取しているのでしょうか。
「健康になるため」。そう考えている人も少なくないでしょう。しかし私は、「健康を願うため」がいいのではないかと思います。
〈こう謎掛けのような話を始めるのは、一般社団法人日本食品安全協会の代表理事を務める長村洋一氏だ。藤田医科大学名誉教授で同大在職中から現在まで多くの健康食品問題の相談を受けてきた長村氏は、薬剤師・薬学博士の立場から健康食品などの機能や安全性を研究してきた専門家である。
紅麹(べにこうじ)を原料とした小林製薬のサプリメントによって、死者を含む多くの被害者が出た大騒動から約1年が経過したが、果たして消費者の健康食品に対する理解はどれだけ進んだといえるだろうか。
改めて、私たちは健康食品とどう付き合うべきなのか、「健康食品のトリセツ(取扱説明書)」について長村氏が続ける。〉
大学受験での合格を祈念して太宰府天満宮にお参りする。受験生であれば、極めて自然な行動だと思います。きっとご利益もあることでしょう。一方で、受験勉強を一切せず、太宰府天満宮でお賽銭を投げただけで合格できると考える人はいないはずです。
「サプリを飲んだから、どれだけお酒を飲んでも大丈夫」は本末転倒
健康も同じことです。バランスの良い食生活に努めること(受験勉強)なくして健康の維持・促進はあり得ません。健康食品(お賽銭)だけに頼って健康を手に入れられることはないのです。実際、消費者庁が作成したパンフレットには、健康食品の一つである機能性表示食品の〈利用のポイント〉として、次のように記されています。
〈まずは、ご自身の食生活をふりかえってみましょう。――食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスをとることが大切です〉
この前提を誤ると、次のようなおかしなことが起きてしまいます。
今日は飲み会でたくさんお酒を飲むから、ウコンのサプリメントを摂取してきた。なので、どれだけ飲んでも大丈夫。
これこそ、健康食品の間違った利用法です。健康食品が暴飲暴食のための「免罪符」になってしまっていて、本末転倒だからです。
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