「テクロノジー」「イメケン」「もろちん」が世に出てしまう恐怖…校閲部員が「単純な誤植ほど危険」と断言する理由
こんにちは、新潮社校閲部の甲谷です。
今回もクイズから。下の文章には、明らかな間違いが3か所あります。それを見つけてください。問題自体は難しくありませんので、「スピード勝負」、制限時間は10秒です。
よろしければ、ストップウォッチなどで計って挑戦してみてください。
では、どうぞ!
答えはこの記事の最後に掲載します。
「校閲の3要素」
前回は、校閲の仕事内容について、「校閲の3要素」と私が定義している(1)調べ(2)素読み(すよみ)(3)合わせ――の中で、世間的にあまり知られていないと思われる(3)の合わせを中心にお話ししました。
今回はその続きとして、3要素それぞれにどんな注意点があるかを、実際の現場での事例も取り入れながら概観していきます。
「調べ」にはバランスが必要
まず(1)の調べでは、「正しい情報に素早くアクセスする」という技術を身につける必要があります。
では、「正しい情報」とは何でしょうか。まずは「一次情報」を参照することが重要です。国会の答弁ならば国会議事録そのものを検索する。また、事件や事故、史実なら新聞記事や辞書など「プロのチェックが入っているもの」をもとに調べます。
個人のブログやSNS、Wikipediaなど、伝聞によるものやチェックが入っていないものは、基本的には参考にしません(ただし企業のSNSなど、公式の情報は調べ物に利用できます)。
さらに、重要なこととして、調べ物というのは没頭すると時間がいくらあっても足りなくなります。しかし、締め切りのある校閲の現場では、時間が無限にあるわけではないので、優先順位や深度など、一言で言うと「バランス」に注意しなくてはならないのです。
例えば海外で発表された論文の細かい内容まで没頭して細かく調べているうちに、もっと大事な、大学教授の人名の決定的な間違いを見落とす――といったことがあり得ます。また、調べに時間をかけすぎるあまり「素読み」と「合わせ」の作業がおろそかになる危険性もあります。
新聞や週刊誌といった、入稿から校了まで数時間しかないスピード勝負の状況で、校閲者としてどう振る舞うのがベストか……なかなか答えは出せませんが、それでも挑戦しがいのある課題です。
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