「絶対死なせてくれよ、頼むな!」 “自殺実況テープ”を聞いたジャーナリストが「いまだに説明がつかない」と語る“ゴーッという激しいノイズ”の正体

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親戚からの借金にも“利息”を払う性格

 レンタル契約をしてでもベンツに乗り、借金が膨れ上がっても御茶ノ水に借りた二つの部屋は解約しない。永瀬氏はA氏のいびつな美意識を思い返し、こう語る。

「会社を立ち上げたばかりなのだから無理してベンツに乗る必要はないし、2800万円という借金も、なりふり構わずに頑張ればなんとか返せる額と思いますよね。自己破産してやり直すこともできたはずです。しかし彼の頭の中に、そんな選択肢はなかった。生前のA氏は、奥さんの親戚から200万円を借り、半月後に返済した際に利息として20万円を渡そうとしました。20万円なんて半月の利息としてはありえない金額で、当然、親戚からも“受け取れない”と断られたんです。それでも“いや、俺の気持ちが済まない”と5万円を渡して帰った。見栄っ張りなんですね、とにかく」

 先述の通りA氏は、奈良でも自殺を図ったが死にきれず、その後、長野のホテルで首を吊ることになる。妻子を殺害し、自らも命を絶つことにした理由をテープに吹き込んでいるが、それを聞いた永瀬氏は今も「酷い男です」と言う。

「運転する車が信州に入ると、雨がしとしと降ってきたそうで“また二人が泣いてると思いましてですね、本当に辛い思いの中を走ってきたんですけれど”と言うわけです。そして終盤には“大変申し訳ないと思いますけど、でも、そういったことに関しては、経済的負担をかけたことに関しては、私たち三人の命で許していただこうと思います”と。A氏の知人が取材に応じてくれましたが、奥さんはとても引っ込み思案で堅実な方。本当は音楽教師を目指していたものの、結婚してA氏を支えてきた。娘さんも、父親の苦境を少し理解していたようで“お父さん、もしダメだったら私が養ってあげるから”と慰めるような優しい子だったんです。取材を進めるなかで沸き起こってきたのは、“どうして大事な妻子を手にかけたんだ、ちっぽけな見栄のために”という怒りしかないですよね」

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