トランプ「ワンマン政権」に米国で高まる不満…100年前に滅んだ統治スタイルが復活、金融市場のさらなる混乱は必至か

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FRB議長の処遇を巡り「仲間割れ」か

 家産官僚制(ワンマン型統治)の悪影響はこれにとどまらない。気がかりなのは、トランプ氏とパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長との間の確執だ。

 パウエル氏は16日、「トランプ関税の影響を見極める必要がある」として、早期の利下げに否定的な見解を示した。早期の利下げを求めるトランプ氏はこれに猛反発し、イエスマン以外はいらないとばかりにパウエル氏の辞任を求める口撃を繰り返している。

 中央銀行の独立性は近代国家にとって欠くことができない制度だが、家産官僚制の主であるトランプ氏にとっては桎梏(しっこく)以外の何ものでもない。

 だが、パウエル氏の辞任要求について、トランプ政権内で異論が出ている。米政治専門サイト「ポリティコ」は17日、パウエル氏の解任は金融市場の不安定化を招くリスクがあるとして、ベッセント財務長官がホワイトハウス当局者らに繰り返し警告していると報じた。FRB議長を巡ってトランプ氏とベッセント氏が対立する危険性が生じているのだ。

 金融市場の動揺を機に政権内で存在感を高めているベッセント氏が、パウエル氏とともにトランプ政権を去る事態となれば、米国を始め世界の金融市場は再び動揺し、基軸通貨ドルの信認も大きく毀損するだろう。

 トランプ氏の独断専行が、これ以上の混乱を国際社会にもたらさないことを祈るばかりだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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