トランプ「ワンマン政権」に米国で高まる不満…100年前に滅んだ統治スタイルが復活、金融市場のさらなる混乱は必至か

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トランプ氏の統治スタイルは100年前に滅んだ?

 トランプ氏が、忠誠を誓う人材を重要機関のトップに任命するとともに、多くの職員を強制的に解雇し、連邦政府の機能を低下させているとの批判もある。

 批判にまったく耳を傾けないトランプ氏のことを「ヒトラーや他のファシストよりもはるかに愚かだ」とする非難する声が出ているほどだ(4月20日付AFP)。

 専門家はトランプ氏の統治スタイルについて興味深い分析を提示している。

 米ウイリアム・アンド・メアリー大学のステイーブン・ハンソン氏らは「トランプ氏の統治スタイルは『家産官僚制』だ」と指摘する(4月4日付クーリエ・ジャポン)。

 家産官僚制はワンマン型統治のことであり、スタッフはイエスマンでなければ務まらない。家産官僚制の下では、統治者は自らを国民の象徴的な父親と位置づけ、国民の保護者だと主張する。トランプ氏が自身をナポレオンにたとえ、「国を救う者はいかなる法律も犯さない」と述べたのがその証左だ。

 家産官僚制は近代国家を支える複雑な機構を管理するにはあまりに未熟だったことから、100年前にスクラップになった経緯がある。先進国では現在、一定の規則と規範に則った公的機関によって統治の正当性が与えられるシステム(依法官僚制)が当たり前になっているが、あろうことか、米国では家産官僚制がゾンビのように復活したというわけだ。

トランプ関税でも貿易赤字はさほど縮小せず

 家産官僚制と化したトランプ政権の政策が朝令暮改となるのは当然だ。ワンマン統治者の気まぐれを誰も止めることができないからだ。

 この悪弊が最も露呈しているのが関税分野だ。引き上げられたと思った矢先に引き下げられ、そのせいで世界経済は大混乱に陥っている。

 トランプ氏は国内産業保護のための関税の必要性を強調しているが、サービス経済化が高度に進展した米国で、従来型の製造業が直ちに復活するとは到底思えない。

 米CNBCが15日に発表したアンケート調査によれば、米国企業の61%が「関税により中国の製造施設を失う場合は米国に移転せず、低関税地域に進出する」と回答した。さらに、米国に製造施設を移転すると回答した企業の81%が「米国工場で労働者を雇用するより自動化を進める」としている。

 関税引き上げにより、米国の貿易赤字はそれほど縮小せず、国内の製造業の雇用もあまり増加しないのが実情だ。だが、殿のご乱心を諫める者はいない。

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