「日本に残してきた妻が浮気している」駐在夫のあきらめ やんわり苦言を呈すと…返ってきた言葉に思わずこみ上げた怒り
「あの人、浮気してるよ」
広夏さんもまた、仕事が忙しいという理由で帰宅が遅くなることがあったようだ。
「手伝っているおふくろによれば、『あの人、浮気してるよ』って。よく言ってましたね。帰宅時に男の匂いがすると。深夜よく、男とこそこそ電話で話しているとも言っていた。相手が男だとどうしてわかるのかと聞くと、『私が聞いたことのないような甘ったるい声で話してる』と。僕も広夏の甘ったるい声なんて聞いたことがありませんから、『それならそうなのかもね』と言うしかなかった。正直、広夏が浮気していてもしかたないと思っていました。夫である僕がほとんどいないんですから、浮気するなというほうが無理。ただ、子どもに悪影響が及ばないようにしてほしいということだけはメールで妻に伝えました。『浮気していてもしかたがないとは思うけど』と」
すると妻は、「寂しいと思うけど浮気はしないでほしい、と書いてほしかった」と返信を寄越した。なにを勝手なことを言ってるんだと匡志さんは怒りを覚えた。女心を理解できなかったのだろう。それでも妻を責めるつもりはなかった。
「とにかく子どもたちのことだけは頼むとメッセージを送りました。妻からは謝罪はおろか言い訳ひとつ来ませんでした」
単身赴任が夫婦関係を壊したとも思ったが、それを選んだのは自分自身だ。彼はますます仕事にのめりこみ、たまに家に帰ると「パパ、また来てね」と子どもたちに言われ、家を出るたび涙ぐんでいた。
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匡志さんの言動は、ほとんど自暴自棄のように見える。海外駐在が続く慌ただしい時期がひと段落した彼は、広夏さんとの関係を修復しようと試みるも……。【記事後編】で紹介する。
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