「日本に残してきた妻が浮気している」駐在夫のあきらめ やんわり苦言を呈すと…返ってきた言葉に思わずこみ上げた怒り

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「あの人、浮気してるよ」

 広夏さんもまた、仕事が忙しいという理由で帰宅が遅くなることがあったようだ。

「手伝っているおふくろによれば、『あの人、浮気してるよ』って。よく言ってましたね。帰宅時に男の匂いがすると。深夜よく、男とこそこそ電話で話しているとも言っていた。相手が男だとどうしてわかるのかと聞くと、『私が聞いたことのないような甘ったるい声で話してる』と。僕も広夏の甘ったるい声なんて聞いたことがありませんから、『それならそうなのかもね』と言うしかなかった。正直、広夏が浮気していてもしかたないと思っていました。夫である僕がほとんどいないんですから、浮気するなというほうが無理。ただ、子どもに悪影響が及ばないようにしてほしいということだけはメールで妻に伝えました。『浮気していてもしかたがないとは思うけど』と」

 すると妻は、「寂しいと思うけど浮気はしないでほしい、と書いてほしかった」と返信を寄越した。なにを勝手なことを言ってるんだと匡志さんは怒りを覚えた。女心を理解できなかったのだろう。それでも妻を責めるつもりはなかった。

「とにかく子どもたちのことだけは頼むとメッセージを送りました。妻からは謝罪はおろか言い訳ひとつ来ませんでした」

 単身赴任が夫婦関係を壊したとも思ったが、それを選んだのは自分自身だ。彼はますます仕事にのめりこみ、たまに家に帰ると「パパ、また来てね」と子どもたちに言われ、家を出るたび涙ぐんでいた。

 ***

 匡志さんの言動は、ほとんど自暴自棄のように見える。海外駐在が続く慌ただしい時期がひと段落した彼は、広夏さんとの関係を修復しようと試みるも……。【記事後編】で紹介する。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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