「日本に残してきた妻が浮気している」駐在夫のあきらめ やんわり苦言を呈すと…返ってきた言葉に思わずこみ上げた怒り
【前後編の前編/後編を読む】妻の不倫は責めないけれど…相手を知って「あんな男と」 “衝動”に走った53歳夫に下された「犯罪だからね」の宣告
海外出張や駐在が多い男性が家族をもつと、その妻は大変である。ずっとワンオペが続く可能性も高い。夫のほうもなんとか家族の形を保ちたいと腐心しても、実際に「一緒にいない時間」が長すぎると、家族としての基盤は弱くなるばかりだろう。
「うちが典型的です。仕事が好きで、現場で楽しく働くのが好きだというだけだったのに、なんだか今は仕事に逃げてきたようなことになっている」
泣き笑いのような表情で岩田匡志さん(53歳・仮名=以下同)は、そう言った。今は帰国しても自宅には戻らず、ホテルに泊まるような状態。だが妻との間で離婚話は出ていない。
「結婚後、海外出張や駐在が多かったから、妻はずっとワンオペだった。それは申し訳ないと思っています。うちは子どもが2人いるんですが、あるとき、どれだけ大変だったかわかっているかと、妻に責められたんですよ。浮気した妻が逆ギレしたんです。僕は責めてないのに。責めるつもりはないと言ったら、『あなたはいつだって、そうやって冷静なふりをする。それは私をバカにしているからだ』と」
いつの間にか妻との間に大きな溝ができていた。ずっと忙しかった匡志さんは、そんな妻と真摯に向き合ってこなかった。
【後編を読む】妻の不倫は責めないけれど…相手を知って「あんな男と」 “衝動”に走った53歳夫に下された「犯罪だからね」の宣告
両親の不貞に憤っていたはずが…
妻の広夏さんとは高校時代の同級生だった。当時は特に意識したことはなかったのだが、卒業から5年後、新入社員として関西に研修に行くときの新幹線の中でばったり再会した。
「トイレに立ったとき、『岩田くん』と声をかけられてびっくりしました。彼女は大学院に進んだと、高校時代の仲間から聞いてはいた。『これから吉野の桜を観に行くの』と言うのを聞いて、いいなあ、こっちは研修だよと。彼女、すっかりきれいになっていて。今度、みんなで会おうよと携帯電話の番号を交換した記憶があります」
とはいえ、ほとんどの同級生が新入社員として多忙だったから、その約束が実現したのは翌年だった。ひとりで広夏さんに会おうとするほどの気持ちは、当時はなかったという。だがみんなで会ったとき、広夏さんがたまたま彼の隣に座った。
「うちさ、両親が離婚したのよと唐突に言うんです。答えようがなくて、大変だったねと言うと、『私と妹は心を痛めたのよ。そうしたらなんと、両親それぞれに相手がいたの。父は離婚から3ヶ月後に再婚、母も半年後には再婚した。まあ、いいんだけどね』と吐き捨てるようにつぶやいた。大人になっても親の離婚は打撃なんだろうなと思いました」
翌年には広夏さんも就職し、そのころからふたりきりで会うようになっていった。しばらくすると広夏さんは、「私、ひとりぼっちになっちゃった」と告げた。同居していた妹が妻帯者とつきあい、駆け落ち同然で地方へ行ってしまったのだという。
「どいつもこいつも道徳観がおかしいと彼女は憤っていました。まあ、でも、それぞれ自分の責任で生きているわけだし、第三者がどうこうは言えないよというと、彼女はわかっているけど腹が立つって。そんなこんなでだらだらつきあっているのもよくないのかなと思って、結婚を前提につきあおうと話し、27歳のときに結婚したんです」
本当ならもうちょっと遊んでいたかった、30歳くらいで結婚すればよかったと彼は言った。だが、広夏さんを手放したくないとも感じていたそうだ。彼女がきちんとした女性だったから、一緒に家庭を営んでいくには適した人だと思っていた。
「男女問わずだと思うんですが、やはり一緒に遊んでいて楽しい人と、家庭をもって一緒に生活していく人とは違うタイプを求めるんじゃないでしょうか。僕にとって、妻は広夏しか考えられなかった」
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