「朝はコーヒー1杯」は危ない? 寝起きがだるい原因は低血糖? 認知機能にも影響する「低血糖」を徹底解説

ドクター新潮 ライフ

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高齢ドライバーの事故にも関係?

 高齢者に関して言うと、低血糖による認知機能の低下の問題が取り沙汰されています。

 徳島県のある病院で、糖尿病ではない高齢者を対象に、低血糖時に認知機能テストを行ったところ結果が悪く、どら焼きを食べてもらい血糖値を上げると、認知機能が回復したそうです。このことから、近年社会問題化している高齢ドライバーの交通事故には、低血糖による判断力などの低下が関係しているのではないかと指摘されています。

 さらに低血糖の人は、筋肉内にあるグルタミンというアミノ酸が、血糖不足を補うための働きである糖新生に使われてしまうため、筋肉がつきにくいという問題もあります。つまり低血糖は、高齢者が介護状態に陥る入り口であるサルコペニア(加齢性筋肉減弱現象)を促進してしまう恐れもあるのです。

 他方、赤ちゃんでも低血糖は起こります。夕方になると機嫌が悪くなり、ぐずるのが止まらなくなる「たそがれ泣き」と呼ばれる現象にも、エネルギーが不足してきて低血糖になることが起因している場合があります。低血糖は、老若男女を問わず誰にでも起こり得ることなのです。

血糖値は瞬間的な値

 では、なぜ低血糖になってしまうのでしょうか。一番多いのは、血糖値スパイクと呼ばれる、血糖値の急激な乱高下によって引き起こされるパターンです。

 食事をして血糖値が高くなり過ぎると、何とか正常値に戻そうとインスリンが分泌されます。ところが、食生活が乱れている人などは、そのインスリンの効きが悪くなり、体はどんどんインスリンを分泌し続けてしまいます。結果的に、大量に分泌されたインスリンによって、極端に血糖値が下がってしまう。つまり、低血糖は高血糖の反動でもあるのです。

 そして、健康な人は低血糖の状態が一時的なものであるのに対し、暴飲暴食を続けている人などは、その状態が長く続いてしまうことがあり、この状態はアメリカのシール・ハリス博士によって「機能性低血糖症」と名付けられています。

 低血糖であるか否かは、健康診断の血液検査で簡単に分かるのではないかと思われるかもしれません。しかし、血液検査で分かる血糖値は健康診断を受けた時の瞬間的な値です。その時に緊張していれば血糖値は上がってしまいますし、低血糖の元凶となる食後の高血糖も、食後すぐに健康診断を受ける人はあまりいないでしょうから、見過ごされてしまいがちです。私が、「かくれ低血糖」と呼んでいるゆえんです。

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