「朝はコーヒー1杯」は危ない? 寝起きがだるい原因は低血糖? 認知機能にも影響する「低血糖」を徹底解説
低血糖による眠気は「生理反応」
人類が誕生したのは500万年前とされますが、人間の体の構造は原始時代と全くと言っていいほど変わっていません。つまり私たちは、原始人と同じ生理によって生きているのです。
原始の時代の大きな課題は「飢餓」でした。現代日本のような飽食の時代を迎えたのはつい最近で、私たちの祖先は、いつ獲物に出会えるか分からない不安定な生活を送り、常に空腹との戦いを強いられていたのです。その証拠に、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモン、グルカゴンと、私たちの重要なエネルギー源である糖質の血中濃度、つまり血糖値を上げるホルモンはいくつもあるのに、血糖値を下げるホルモンはインスリンだけです。「糖分を取り過ぎる」という事態を、体はほとんど想定していなかったのです。
食事にあり付けず、エネルギーが不足している時に活動的になることは命の危険につながります。食べていないのに動き回ればエネルギーが枯渇してしまう。従って生命を守るには、じっとして、エネルギーを浪費しないに限る。
そのため人間は、低血糖の時に自らを不安にさせたり、眠くさせたりして、決して活動的にならないようにする身体メカニズムを作り上げました。先ほど説明した、「意志」とは関係ないとは、このことを意味します。つまり、低血糖による眠気などは抗いようのない「生理反応」なのです。
カフェインによる“ドーピング”
低血糖の時は非活動的になるのが自然の摂理とはいえ、日常生活をしていく上でずっと非活動的でいるわけにはいきません。そこで、食欲がないため朝ご飯を食べられず、血糖値を上げることができない代わりに、コーヒーを飲みカフェインを摂取することで無理やりに体を覚醒させようとする。この習慣は、言ってみればカフェインによる“ドーピング”のようなもので、体に負担をかけてしまっているのです。
なお、大人になったから朝ご飯を食べられないのではありません。睡眠中に低血糖に陥り、その状態を何とかリカバリーしようとして、アドレナリンなどが分泌されるため、朝起きるとぐったりしていて食べられないのです。寝違えも、就寝中に、アドレナリンなどによって体が興奮状態になっていることで引き起こされるケースがあります。
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