「“男のメンツ”が邪魔して孤独に…」 認知症グレーゾーンの見分け方とは 「約40%が5年以内に認知症に」
「意・情・知」
まず改めて説明すると、MCI、すなわち認知症グレーゾーンとは、認知症になる人が必ず通る分かれ道であり、認知機能が低下しているものの日常生活に大きな支障はない、しかし放置すると危険な状態を指します。「認知症グレーゾーン」から「認知症」になるまでの猶予は5~7年とされており、この期間に対策を取ればUターンできる可能性もあります。従って、認知症予防の一つの重要なポイントは、認知症グレーゾーンに足を踏み入れているか否かを把握することにあるのです。
では皆さんは、自分が認知症になりかかっているかもしれないと疑う時に、どんなことを気にしますか? 多くの人が気にするのは記憶力の低下だと思います。人の心の働きは「知・情・意」(知性・感情・意志)という言葉で説明されることが多く、皆さん真っ先に記憶力の低下、すなわち「知」の衰えを気にするわけです。患者さんに限らず医師の側も、認知機能テストなどで計測しやすい「知」の衰えを重視しがちです。
しかし認知症とは、必ずしも記憶力の低下から始まるわけではありません。記憶をつかさどる脳の海馬の機能よりも先に、前頭葉の機能が低下することがあるからです。前頭葉とは、脳の司令塔ともいうべき部位で「意欲」をつかさどっています。つまり、認知症の入り口であるグレーゾーンか否かを見分けるには、意欲の低下も大きなポイントとなるのです。
意欲が失われれば、感情も色あせてしまいます。従って私は、認知症の進行は「意・情・知」の順番で注意を払うべきではないかと考えています。認知症グレーゾーンのサインは意欲の低下、要は「面倒くさい」という言葉を頻繁に口にするようになることとして表れるのです。
10のチェックリスト
「知」に限らない「意」「情」の衰え。これを踏まえた上で私が作成した、認知症グレーゾーン自己診断チェックリストは次の10ポイントです。
(1) いま何をしようとしていたか思い出せない。
(2) 同じことを繰り返し言ったり、聞いたりする。
(3) 人と会う約束を忘れてしまうことがある。
(4) 物を探すことが多い。
(5) 何かをしようとしても「まあいいか」とやめてしまう。
(6) 長年親しんできた趣味を楽しめなくなった。
(7) 外出する機会が減った。
(8) 段取りが下手になった。
(9) お会計をする時に小銭を使うのが面倒くさくなった。
(10) 今日の日付が言えない。
以上の10項目のうち、3個以上該当する人は、認知症グレーゾーンの可能性が考えられます。
次に、より具体的に、「認知症グレーゾーンの疑いあり」か「単なる老化」かを識別するポイントをいくつか見ていきましょう。
・「外に出かけるのが面倒くさい」
こう感じて、外出を控えてしまうのは、(7)にある通り、認知症グレーゾーンであることが疑われます。とはいえ、年齢を重ねて体力が落ちれば、若い頃と同じようには出かけられません。従って、外出機会の「総数」は減っていたとしても、なじみの店には以前と同じようにちゃんと通っているというケースは心配する必要がないでしょう。
他方、以前は定期的に足を運んでいた場所や集まりに顔を出さなくなったとすれば、認知症グレーゾーンの疑いありです。なぜなら、それは典型的な「面倒くさい」の兆候だからです。
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