「サザン」10年ぶり新アルバムでも“猪木愛”は不変! 「桑田佳祐」の深すぎるプロレスファンぶりを振り返る

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「元気があればなんでもできる!」

「ただの目立ちたがり屋の芸人です!」

 1978年8月31日、「ザ・ベストテン」に初登場した時の桑田の一声である。

「異端のバンド」「コミックバンド」。それらが1978年のデビュー当時、サザンオールスターズに冠されがちな異名だった。作詞家の森雪之丞は、デビュー曲「勝手にシンドバッド」が、当時のヒット曲「勝手にしやがれ」(沢田研二)と「渚のシンドバッド」(ピンクレディー)をかけあわせた、特に詞の内容とは関係ない、いわばウケ狙いのタイトルの曲だとし、大意として次のように解題している。

「日本語でやるロックの難しさは、その歌詞の乗せ方にあった。そもそもロックは英語を乗せて歌われて来たために、日本語だとどうしても合わない。そこで桑田君は(「勝手にシンドバッド」のBメロのように)、“合わないのなら、無理にでも詰め込んじゃえ”とした。歌詞を、意味でなく、ノリで乗せたんです」。そして、デビュー当時の桑田を、こう表現する。
〈掟破りな、ロック界のプロレスラー〉(「FLASH」1998年7月7日号)

 そんな異端児扱いされた初陣から幅を広げ、様々なアプローチを繰り返し、国民的バンドになっていったのは周知の通りだ。

 2023年10月1日、サザンオールスターズは都合3度目の茅ヶ崎凱旋ライブを茅ヶ崎公園野球場でおこなった。全4公演あったうちの、この日が最終日だった。終盤、桑田は、こう口にした。

「あの……今日は私の大好きだったアントニオ猪木さんのご命日なんです。皆さん、心を込めてご唱和願います。元気があれば、何でもできる! 1、2、3、ダーッ!」

 最後に、桑田佳祐の箴言を置いておきたい。

「“世界”もいいけど、“世間”も大事にね」

 それは、サザンオールスターズの音楽性のみならず、アントニオ猪木のプロレス観、そのものではなかったか。

瑞 佐富郎
プロレス&格闘技ライター。早稲田大学政治経済学部卒。フジテレビ「カルトQ~プロレス大会」の優勝を遠因に取材&執筆活動へ。近著に「プロレス発掘秘史」(宝島社)、「プロレスラー夜明け前」(スタンダーズ)、「アントニオ猪木」(新潮新書)など。

デイリー新潮編集部

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