年5回の密会を続けて7年超…52歳夫が“現地妻”と決めた「もしも」の時の2週間ルール
出張は終了 しかし…
それ以降、ふたりはさまざまなことを話し合った。2ヶ月に1度、朋宏さんはその町に出張で訪れる。事前に日にちを知らせ、ユリさんにも時間を作ってもらった。出張時は会社に報告するホテルとは別に、もうひとつホテルを取った。そして彼は彼女が帰るとチェックアウトして、報告したホテルに戻る。そんな関係が1年、2年と積み重なっていった。
「もちろん彼女の母親が具合が悪いとか、彼女自身が不調だとかいろいろあって会えないときもありました。それでも年に5回は会っていた。やはり濃密な時間でした」
7年が経過したころ、彼の出張は終わった。担当がまったく別の地域になってしまったのだ。それでも彼はユリさんに今まで同様、出張する日を伝え続けた。
「もうユリのいる町に出張しないと言ったら、関係が切れそうで怖かった。僕はどうしても彼女と会い続けたかった」
「もしも連絡が取れなくなったら…」
妻の咲紀子さんにはまったく気づかれていなかった。出張先が増えたと伝えると、「忙しいのね。体に気をつけてね」と言われただけだ。妻は変わらず仕事をしているが、家庭とのバランスもうまくとれるようになり、家族3人は淡々と、だが仲良く暮らしている。
「ユリといるとき、僕は素のひとりの男になれる。父でも夫でも社会人でもなく。ユリも同じことを言っています。ただ、ユリは最近、『あなたの出張っていつまで続くの? もし終わりが来たらどうなるの?』と不安そうにつぶやいた。だから出張がなくても僕はユリに会いに来ると宣言しました。これで出張が終わっているとわかっても大丈夫だとホッとしました」
それでもいつか終わりが来るかもしれない。週に数回はLINEのやりとりをしているが、もし2週間、連絡がとれなかったら僕に何かあったと思ってほしいと伝えてあるという。
「ユリは自宅の電話番号を教えてくれました。同じように2週間、連絡が取れなかったら自分に何かあったと思ってほしいと。人間なんていつどこでなにがあるかわかりませんからね。お互いにそれだけの覚悟をもってつきあっている。その時間が自分の人生にとって必要だから、相手の存在がどうしても必要だから。不倫だと叩くのは簡単ですけど、その人の心の奥にどれだけの思いがあるか、わかって叩いているのかなとときどき怒りがこみ上げてきます」
世間で不倫を叩いていると、彼は自らが叩かれていると思えてならないのだそうだ。もちろん、バレたら妻や娘は傷つくだろう。だから慎重になる。もっと会いたくても、変わらず2ヶ月の1度のペースは崩さない。
「だからいいだろうと言っているわけではないんです。こんなに人を思う気持ちを抱えたまま生きている人間がいるということを知ってもらいたかっただけ。共感も同情もいらないけど非難はされたくなくて……」
今のままでいいのではないだろうか。ひっそりと愛を育んでいけば。誰にも知られないようにしながら、ふたりだけの関係を温め続ければ。世間における不倫バッシングなど見なければいい、聞かなければいい。そのメンタルの強さがあれば、今後もひっそりと関係は続けていけるはずだ。
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自然な成り行きで咲紀子さんと結婚に至ったはずが、ユリさんの引力には逆らえなかった……。親友の自死、そして朋宏さんとユリさんのなれそめは【記事前編】で紹介している。
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