年5回の密会を続けて7年超…52歳夫が“現地妻”と決めた「もしも」の時の2週間ルール

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【前後編の後編/前編を読む】「冷えた夫婦関係のままでというのも酷…」と語る52歳不倫夫 彼の価値観を変えた“2つの重大事件”とは

 田之上朋宏さん(52歳・仮名=以下同)は、高校時代の親友を自死で喪った。受験直前のその出来事に衝撃を受け、立ち直れずに2浪。その後なんとか大学に進学するが、本当に親友の死を受け入れられたのは就職してからだという。29歳のときに出会ったユリさんに惹かれ関係を始めるが、職場の同僚の何気ない一言をきっかけに、彼女が既婚者であることが発覚。親が夫の世話になっているから離婚はできない、というユリさんの話を聞いたうえで、朋宏さんは別れを切り出した。
 
 ***

 それからは仕事に精進したが、30代半ばを迎え、ひとりの部屋に帰るのがつらくなっていった。

「会社か自宅近くの居酒屋ばかり行ってましたね。特に冬になると居酒屋でひとり鍋を作ってもらったりして。そんなとき新入社員のころから行っている居酒屋の大将が、『朋ちゃん、紹介するよ。うちの遠縁の咲紀子』と会わせてくれたんです。30歳をとうに超えていると言っていたけど、すらりとしていてきれいな人だった。『キャリアウーマンだそうだよ。オレにはわからないけどさ、結婚したくないんだって、おもしろいよね』と大将がべらべらしゃべり、『結婚したくないなんて言ってないわよ、しなくてもいいと思ってるだけ』と彼女はむくれていました。そして僕のほうを向いて、キャリアウーマンでもなんでもないんですよと笑ったんです。その笑顔がなんとも言えずかわいかった。まあ、かわいいなんて言うと彼女に怒られますが。私は大人なんだからかわいいって言うなって」

親友の話をすると

 店の近くに会社が移転したので、ここに来るようになったと彼女は話した。なんとなく世間話をし、その日は彼が一足先に店を辞した。数日後、また行ってみると彼女がいた。

「最近、毎日のようにここで夕飯をとってるのと彼女が言うんです。自炊しないのと聞いたら、『これから会社に戻るから』って。彼女、経営者だったんですよ。すごいね、どうやって起業したのと話が弾みました。仕事の話をしている彼女はキラキラしていた」

 彼は起業する気はなかったが、起業する人には興味があったという。一歩踏み出すその勇気に敬意をいだいていた。彼女はその敬意を感じ取ったのだろう、自分の場合を丁寧に説明してくれた。

「彼女は社会的意義を感じて起業している。えらいなあと無条件で思いました。努力と勇気と根気さえあれば、と彼女は言ったけど、僕にはどれもない。そう言うと彼女は大きな口を開けて、がははと笑いました。その豪快さがよかった」

 ふっと気持ちが緩んだ。そして彼はなぜか、高校時代の親友の話をしてしまった。彼女は目を潤ませながら、ときどき頷き、ただじっと聞いてくれた。

「考えてみたら、もう18年も前の話でした。彼女は『彼、きっとあなたを応援してると思う』と言ってくれた。なんか本当にそうかもしれないと素直に思えました。相変わらず、僕は彼のことが引っかかっていたんです。もう立ち直ってはいたけど、いつも何かできたんじゃないかと思ってしまう。彼女の仕事の話を聞いて、社会的意義という言葉に心が揺れたのも、僕自身が自分の存在意義に常に不安を抱いていたからかもしれません。“意義”という言葉に弱いんです」

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