「発生した硫酸が下水管を腐食させる」「マンホールが多い場所は要注意」 八潮・道路陥没の三つの不運
「マンホールが点在している場所は要注意」
基本的に下水管は「自然流下」といって、高低差(勾配)と重力を利用して下水を流している。また、事故現場の下水管は交差点に沿ってカーブする形で通っていた。
この形状が硫化水素の発生を促した可能性があるとして、加藤氏はこうも言う。
「下水管が方向を変えるためカーブしている部分には、下水が滞留しやすいのです。滞留してしまうと、先ほど述べた有機物の汚れが下水管の中に沈澱し、また酸素も少ないので菌の繁殖が旺盛で硫化水素も発生しやすいのです」
事故現場付近の道路上には、マンホールが点在していたが、これも硫化水素が発生しやすいポイントで要注意だという。
「マンホールというのは、地下への点検用の穴という役割のみならず、下水管の方向を変えるために置かれています。マンホールが敷設された付近の下水管には段差があって、滞留した下水がバシャバシャと跳ねて巻き上がったりします。そうなると、下水の中に発生していた硫化水素が空中に放出されやすくなり、硫酸となってしまう。マンホールの下部は腐食しやすい空間なのです。特に陥没箇所に隣接して10メートル四方の大きなマンホールが地下にあるようです」(同)
三つ目の不運
しかも今回、穴の開いた下水管は直径約4.75メートルもある「中央幹線」と呼ばれる巨大なモノだった。これが三つ目の不運で、被害を大きくしてしまった。
「今回の事故現場を流れていた下水管は、とても範囲の広い流域下水道のモノで、下水処理場に近い最下流の箇所での事故でした。影響も大きく12市町、約120万人に対して下水道の使用自粛の要請が出ました。恐らく全国でもベストテンに入るくらい広い範囲を担当している流域下水道なので、影響も甚大なわけです。また経済的な理由から、下水道は細い管だと塩化ビニール管が多く、中大型だとコンクリート製になることが多いですね」(加藤氏)
あらゆる管の中でも、特にコンクリート製は腐食しやすく、そのため日頃の点検が欠かせない。国交省は下水管の標準耐用年数を50年と定め、今回の事故現場のような大規模な下水管は、最低でも5年に1回、検査するよう求めている。
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