「腹違いの弟」が女性を連れて現れ…49歳夫の幸せな家庭は壊された 「10年後、妻と笑い話にできるかどうか」
【前後編の後編/前編を読む】「義父とお酒を飲んで涙が出そうに…」 “親の愛”を知らない49歳夫が育った、継母との温もりなき家庭
岩尾隆正さん(49歳・仮名=以下同)は、父の再婚相手と “腹違いの弟”と寝起きする居心地の悪い家庭で育った。妻の紗織さんとの結婚で義両親と出会い、やっと家の温もりを知ったという。継母と弟とは長く疎遠だったが、父の訃報をきっかけに、隆正さんは久々に弟と連絡を取る。この再会によって、隆正さんの幸せな生活は脅かされていく……。
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【前編を読む】「義父とお酒を飲んで涙が出そうに…」 “親の愛”を知らない49歳夫が育った、継母との温もりなき家庭
3年前、弟が突然、女性を連れて隆正さんの家にやってきた。
「ご無沙汰してごめんなさい、と弟は玄関先で頭を下げました。印象が変わって、とても穏やかになっていた。ふたりを部屋に上げると、葉子さんというその彼女と結婚したという。おめでたいじゃないですか。紗織ともども大喜びして、子どもたちも一緒に近所の中華料理屋で食事をしました。弟の妻になった女性も、とても感じのいい人で、今後、弟の母親と一緒に3人で住む予定だと聞かされました」
うまくいってよかった、これで弟の人生も変わるだろう、自分が紗織さんによって変わったように。隆正さんはそう思いながら、紗織さんへの感謝を改めて口にした。紗織さんは照れていたが、「お互いさまよ。私だってあなたに支えられてるもの」と手を重ねてきた。
だがそれから半年ほどたったころ、弟から「離婚した」と連絡があった。多くを語らない弟の気持ちを考えると、隆正さんはいても立ってもいられなくなり、葉子さんに連絡をとって会った。
「弟がせっかくあなたに出会って穏やかな人生を送っていると思ったのにと言うと、彼女はうつむいていました。結局、弟の母親、彼女にとって義母にあたる人との関係がよくなかったみたいですね。『夫はいつでも母親の味方をして、私に手を上げたことも1度や2度ではない』と聞いて、離婚やむなしと思いましたね。彼女はいたく傷ついていたから、本当に申し訳ないと僕が頭を下げました。今後のことを相談してもいいですかと言われ、断る理由もなかった」
小さな弟がいつでも心の中に
それから彼は、葉子さんの就職先を一緒に探したり住む場所の保証人になったりした。弟の不始末は自分がとらなくてはいけないような気持ちになっていた。だが、それに不信感を抱いたのが妻の紗織さんだ。帰宅時間が遅くなったり、物思いにふけっている彼の様子を見て、浮気を疑ったのだ。
「浮気なんかするはずないだろと言いながら、疑惑をもたれていることじたいにイラッとしました。でも弟の元妻の世話を焼いているとは、なんだか言えなくて。妻には弟のことなんて関係ないですしね。僕の中では『おにいたん』と後をついてきた、あの小さな弟がいつでも心の中にいたんです」
話したほうがいいのかもしれないと思いながらも、いつまでも葉子さんと関わるつもりはなかったから、話さなくてもいいだろうと考えた。妻によけいな心配をさせたくなかったこと、自分の身内の恥を話すことをためらったことが理由だ。ただでさえ、自分の家庭にはコンプレックスがあったから。
「でもそのうち、葉子さんは夜中にLINEを送ってきたりするようになった。ひとりで不安だったんでしょうけど、それが紗織の疑惑を濃くしてしまった」
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