秋田のスーパーに居座ったクマは“生粋の都会育ち”か…専門家が明かすアーバンベアの進化 「山から下りてきた」のではなく「そもそも街で暮らしている」可能性
発砲に萎縮する現場
テレビ局はクマの居座るスーパーにSITが駆け付け、ワナの設置を行う様子を視聴者に伝えた。「なぜ発砲しないのか」と疑問に感じた方もいただろうが、それは専門家も同じだ。
「札幌高裁は10月、ヒグマの駆除で建物に向かって発砲したため猟友会の支部長が猟銃所持許可を取り消された問題で、取り消しは適法とする判決を下しました。秋田市のスーパーでSITが対応する様子を私もテレビで見ましたが、判決の影響で現場が萎縮しているのは明らかだと思います。スーパーにクマが居座っているという事態で警察が出動したのですから、この状況で適用されるべき法律は警察官職務執行法でしょう。そして実際に警察官がクマに向かって発砲した事案はあるのです。SITなど県警の警察官がクマに向かって発砲すべき状況だったにもかかわらず、それは行われませんでした」(同・米田氏)
米田氏によると日本でクマが何頭棲息しているのかは1万頭説から10万頭説まであり、正確な数字は得られていないという。一方で生息地が拡大しているのは確実だとされており、ここ15年で最大で3倍、平均して1・4倍ほど広がっている。
「生息地が拡大しているわけですから、人とクマが接近する機会は確実に増えている。にもかかわらず、私たちはクマが何頭いるのか正確な数字を把握できないまま、クマ問題と対処する必要に迫られています。クマの駆除で猟銃の使用が制限されてきたのは2000年代から始まっています。現場からは『警察に銃の使用許可を求めると、最低でも1時間、ひどい時は2時間半かかった』という悲鳴が上がるようになりました。もちろんクマは動いていますから、1時間も経てば見失ってしまうことも珍しくありません。今、クマの駆除に関する新しい法律やルール作りが話し合われており、来年以降に発表される見通しです。ただ、山間部が豊作の今年に発表されていれば、対応が楽だったと思わざるを得ません。不作と新法律や新ルールの実施が重なってしまうと現場が混乱するのは明らかです。いずれにしても、今後も人とクマのトラブルは続くのは間違いないでしょう」(同・米田氏)
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