秋田のスーパーに居座ったクマは“生粋の都会育ち”か…専門家が明かすアーバンベアの進化 「山から下りてきた」のではなく「そもそも街で暮らしている」可能性

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スーパーの北部で越冬した可能性

「秋田市の湾岸地帯は木が生い茂っている場所があり、クマは頻繁に発見されています。またスーパーの北側には県立博物館があり、この周辺は自然が豊富です。子グマなら人に見つからず、越冬も可能でしょう。つまり母グマとはぐれた子グマが博物館周辺など市内で年を越し、秋になって天王地区で果樹などを食べた可能性が指摘できます。そしてクマが『森に帰ろう』と判断するのは気温の低下を感じ取ってからです。今回の秋田市のスーパーに侵入したクマは、9月から秋田市北西部の金足地区、天王地区で多数目撃されており、11月末から悪天候、具体的には平野部が積雪に覆われる前に東側に連なる大平山系に向かって移動を始めたのですが、車や交通体系に阻まれて移動できなくなり、南側に見える高清水公園を目指したと思われます」(同・米田氏)

 東に向かうべきところを間違って南下し、スーパーを見つけて店内に入ってしまったということのようだ。

集落依存型クマ

 2010年代では人を恐れないどころか、「人間は食べ物」と学んでしまった「新世代クマ」の出現が注目された。2020年代に入ると、北海道を中心に人間の生活圏に出没する「アーバンベア」が脚光を浴びた。米田氏は、さらに新しいタイプのクマが出現する可能性が高まってきたと指摘する。

「アーバンベアは都市部に近接する森林地帯から住宅地などに移動してきたクマを指します。それが秋田市のケースでは『都市部で育って成長した』という、いわば“生粋の都会育ちであるクマ”の存在が明らかになりました。実は20世紀末から、山間部の集落では人間と共存する『集落依存型クマ』の存在が明らかになっています。クマが集落から都市部に移動するのは必然だと考えられ、例えば青森県では十和田市と三戸郡、津軽平野への生息の広がりが顕著で、弘前市内に出没したり、八戸港で駆除されたりしています。アーバンベアの次は『アップルベア』でしょう。90年代は絶滅の恐れがある広島、島根、山口県の山間地ではクマと住民の共存が図られましたが、現在では人口そのものが消滅して被害の訴えが減り、かえって海岸部での出没騒ぎが目立ちます。今後はクマと都市部の住民を巡って、様々な軋轢が表面化すると考えられます」(同・米田氏)

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