秋田のスーパーに居座ったクマは“生粋の都会育ち”か…専門家が明かすアーバンベアの進化 「山から下りてきた」のではなく「そもそも街で暮らしている」可能性

国内 社会

  • ブックマーク

都会育ちのクマ

 米田氏は全国のクマの動向について最新の情報を得ている。さらに秋田県はなじみの深い場所だ。土地勘が豊富な米田氏に今回の“大事件”について見解を訊いた。

「テレビなどの報道を見て、『山にエサがなく、冬眠前の腹ごしらえのため市街地のスーパーに現れた』と受け止めた方は少なくないでしょう。ところが今年は全国の山間部でドングリなどクマの食料は豊作なのです。東北や北海道も例外ではなく、今年の9月以降、クマが出没したという通報は全国的にぴたっと止まっていました。そうした中、今回のスーパー立てこもりが起きたわけですが、問題のクマは体長が1・1メートル、体重が69キロあったそうです。1メートルの熊なら体重は40キロ前後が一般的です。およそ倍の体重ですから、それほど猛烈に太ったクマだったのです」

 山間部は確かに豊作だ。とはいえ通常の倍以上に太るのは尋常ではない。はち切れそうなクマの体から「森に住んでいたクマが数キロ歩いてスーパーに来た」という可能性は低いことが導き出される。「もともと都市部で生活していたクマ」だと判断すべきだという。

秋田市の海岸部でもクマは常在化

「昨年の冬、秋田県や福島県などでは母グマと子グマが一緒に行動している姿が相当数、目撃されました。母グマは捕獲、駆除されたのですが、かなりの子グマが残されたようです。赤ん坊グマは母グマを見失ったところで母グマを待つ習性があり、東北各地で昨年の初冬期に体長50センチの子グマが出没し続けたのです。今年の春に各地の都市部郊外で50センチのクマが目撃されたのは、そのためです。このような状態から近年、秋田市の郊外では若いクマが常在するようになり、いわゆる北海道で言う『アーバンベアー』のような都市型のクマが増えています。こういうクマは広島県や島根県では80年代から普通に見られました」(同・米田氏)

 テレビ局など一部の報道機関はスーパーの西側は海が近いためクマは棲息できず、東側は森までの最短距離が数キロあると解説、スーパーの付近はクマが出没するような場所ではないと指摘した。だが、これも事実とは異なる。

 初夏に若いオスグマが大移動することがあるが、基本、夏に見たクマは、その近くで生まれており、その場所が故郷だ。この夏、秋田市から潟上市にかけて多数のクマが目撃されており、もはや海岸部も常在化しているという。

次ページ:スーパーの北部で越冬した可能性

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。